胸のなかに熱がこもってモヤモヤしたり、気持ち悪い感じがすることを胸焼けといいます。二日酔いのときの気持ち悪さを想像していただくとわかりやすいかもしれません。胸焼けや酸っぱい水がこみ上げてくる症状は、胃酸が食道をさかのぼってきているためであり、
逆流性食道炎(胃食道逆流症)がもっとも疑われます。
食べすぎ、肥満、食道裂孔ヘルニア、亀背(きはい)などの物理的な要因でも生じることがあります。また、
ピロリ菌の除菌をすると胃酸の分泌量が増えるために逆流性食道炎を発症することがあります。
逆流性食道炎の症状は人によって非常に多彩であり、詳しくお話をうかがわないとわからない場合もあります。「夜になると咳きこむ」「ときどき胸や背中が痛くなる」「声が枯れる」などはその一例であり、若手医師の教育においても重要な疾患です。
逆流性食道炎を放置することで食道がんの発生する可能性が高くなりますので、きちんと治療すべき疾患のひとつです。
日本ではもともと飲酒と喫煙による胸の真ん中あたりの食道がんの発生頻度が欧米よりも高くありましたが、近年では食生活の欧米化や肥満の増加により逆流性食道炎をリスクとした食道下部から胃と食道のつなぎ目あたりのがんの発生が増えています。
逆流性食道炎と同じような症状を呈する疾患に「食道アカラシア」という稀な疾患があります。これは食道と胃のつなぎ目(ちょうどみぞおちのあたり)の筋肉がきちんとゆるまないため食べ物が食道から胃に入っていかない特殊な疾患です。食道アカラシアや食道の運動異常などの疾患は専門医による精査が必要です。
<検査・診断>
逆流性食道炎をただしく診断するためには上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)が必須ですが、症状から診断して内服治療をはじめることもあります。
<治療>
治療は胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害剤:PPI)が中心となりますが、対症療法であるため長期間の服用になってしまう場合もしばしばあります。PPIは処方日数に制限があり、内服により症状が軽快した場合には一時的に休薬することも重要です。
逆流性食道炎では飲酒や食事内容による胃酸分泌の増加や、食べてすぐ横になる(胃から食道に逆流しやすい)などの生活習慣を見直すことで症状を軽減させることもできます。
当院では逆流性食道炎の治療に漢方薬も取り入れており、症状の軽快・再発の予防に役立てることができています。