胃は食べた物を一時的に溜めこみ、胃酸などによって消化する重要な臓器です。また、ビタミンB12や鉄分の吸収にも重要な役割をになっています。
胃潰瘍や悪性腫瘍のために胃切除手術を受けると、これらの胃の機能をおおきく損なうことになり、さまざまな症状があらわれます。
胃切除術後に生じるさまざまな症状を
胃切除後症候群といいます。
主な症状は①
早期ダンピング症候群、②
晩期低血糖、③
貧血などです。
①
早期ダンピング症候群 炭水化物を大量に食べてしまうと、胃にためてゆっくり消化することができず、一気に小腸に流れ込んでしまい血糖値が急上昇します。また、食べ物の浸透圧のせいで血液中の水分が小腸に流出してしまい、脱水状態となってしまいます。
② 晩期低血糖
早期ダンピング症候群によって血糖値が急激に上昇すると、からだは血糖値を下げるためにインスリンというホルモンを多量に分泌します。そうすると、食後3~4時間したころに反動で低血糖となり、頭痛、イライラ、吐き気、寒気などの症状が現れます。
③ 貧血
胃はビタミンB12や鉄分の吸収に関与しています。これらの栄養分が十分に吸収されないと、それぞれ特徴的な貧血を生じます。
<検査>
ダンピング症候群は症状や経過から診断しますが、血糖値やインスリン分泌量を調べることも有用です。鉄欠乏性貧血では赤血球が小さくなり、ビタミンB12不足の貧血では赤血球が大きくなります。これらを確認したうえで鉄分やビタミンB12の血液検査をします。
<治療>
ダンピング症候群の予防には①食事をゆっくりよく噛んで食べること、②塩分や糖分がおおく味付けの濃いものは避けること、③単純炭水化物を減らすこと、などの食事の工夫が重要です。胃切除後は今まで通りの食事量をいちどに食べることがむずかしくなります。ダンピング症候群の予防、低血糖の予防のためにも一回の食事量を減らして複数回にわけたり、間食をとるようにするなどの工夫も大切です。
鉄分やビタミン不足の貧血にたいしては注射や内服薬によって補充治療をおこないます。
ダンピング症候群に対する漢方治療はなかなか決定打がありませんが、胃腸のはたらきを整えるという点で六君子湯(りっくんしとう)や補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を使用します。