安全なイメージのある漢方薬ですが、薬効成分が人体になんらかの影響をおよぼすわけですから、副作用や使用に際して気をつけなければならないことがあります。
<代表的な副作用>・
間質性肺炎 …柴胡と黄芩の組み合わせで生じやすい副作用です。漢方薬を服用していて空ゼキ(痰のない
咳)が出現した場合には漢方薬を中止し、胸部CTなどの検査が必要です。
・肝機能障害
…漢方薬の服用により肝機能障害が生じることがあります。日常的に漢方薬を服用されている
場合には定期的に血液検査でチェックすることが必要です。
・偽性アルドステロン
…甘草の内服量が増えてくると生じる副作用です。甘草の成分であるグリチルリチン酸が人体
のアルドステロンというホルモンと同じはたらきをするため生じます。手足の疲れや脱力感
などの症状が生じます。血液検査では血液中のカリウムが減少しています。
・腸間膜静脈硬化症
…山梔子を含有する漢方薬の長期服用により報告されています。
<漢方の内服に注意すべきかた>
・高血圧、心筋梗塞や狭心症のあるかた
…麻黄含有製剤ではエフェドリンにより基礎疾患が悪化する可能性があります
・胃腸がよわいかた
…麻黄や地黄、大黄などにより胃腸障害が生じる可能性があります
・アレルギー体質のかた
…どのような薬剤や生薬に対してもアレルギー反応が生じる可能性があります
・妊娠中のかた
…漢方薬に催奇形性は報告がありませんが、妊娠初期(6週~11週)には内服を控えることが
安全です。一部の生薬*には子宮筋へ影響があり、使用上注意が必要とされています。
*枳実、紅花、牛膝、呉茱萸、大黄、ヨクイニン
<麻黄を含む主な処方>
麻黄湯、麻黄附子細辛湯、葛根湯、小青竜湯、越婢加朮湯、五虎湯、五積散、防風通聖散、神秘湯、麻杏甘石湯、麻杏薏甘湯 など
<地黄を含む主な処方>
牛車腎気丸、温清飲、四物湯、十全大補湯、人参養栄湯、八味地黄丸、六味丸、潤腸湯、五淋散、芎帰膠艾湯、荊芥連翹湯、三物黄芩湯、滋陰降火湯、七物降下湯、消風散、疎経活血湯、大防風湯、当帰飲子 など
<大黄を含む主な処方>
潤腸湯、麻子仁丸、防風通聖散、乙字湯、三黄瀉心湯、桂枝加芍薬大黄湯、大黄甘草湯、大黄牡丹皮湯、大柴胡湯、大承気湯、治打撲一方、治頭瘡一方、調胃承気湯、桃核承気湯