新前橋すこやか内科・漢方内科クリニック|内科・漢方内科、外科、補完・代替医療(自由診療)

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肝・胆・膵疾患

胃や腸は管(くだ)状の構造になっている消化器官であり、消化管と総称される一方、肝臓や膵臓は細胞がギッシリ詰まったような臓器であり実質臓器と呼ばれます。

こちらのページでは肝臓(および胆嚢)と膵臓の疾患に利用される漢方薬をご紹介します。

急性・慢性肝炎
 …肝炎の炎症による肋骨周囲の苦しさや痛みなどの症状には小柴胡湯(しょうさいことう)という漢方薬を応用します。かつて、慢性肝炎に対する小柴胡湯の利用方法が誤解されて濫用されたために間質性肺炎という副作用が多発してしまったことがあります。慢性肝炎を小柴胡湯だけで治療できるわけではなく、慢性肝炎の一部の状態において小柴胡湯が有効であるということです。なお、慢性C型肝炎におけるインターフェロン療法と小柴胡湯の併用は禁忌とされています。
 黄疸(胆汁のビリルビンという成分が血中で増加した症状)が生じた場合には茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)茵蔯五苓散(いんちんごれいさん)という漢方薬を使用します。

肝硬変
 …肝硬変は肝臓疾患の末期的な状態であり、炎症により破壊された肝臓が瘢痕組織に置き換わり、もう元に戻らなくなってしまっている段階です(肝臓は再生能力の高い臓器であり、切除などをしても次第に元の大きさほどに増殖します)。
 肝硬変では疲れやすさや怠さなどの症状があるため、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)などの補剤を使用します。また、むくみや腹水に対して五苓散(ごれいさん)などの利水効果のある漢方薬を使用します。
 肝臓は本来、再生能力の高い臓器ですが、肝硬変に至っては再生は期待できません。漢方薬も症状の改善にとどまるものであり、肝臓を再生させ肝硬変の状態をもとに戻すことはできません。

原発性胆汁性肝硬変(胆管炎)
 …自己免疫疾患のひとつであり難病指定されています。胆汁のうっ滞による黄疸、身体のかゆみを生じるとともに徐々に肝臓が破壊されてしまい(慢性肝炎)、最終的には肝硬変に至ります。黄疸や身体のかゆみに対しては茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)黄連解毒湯(おうれんげどくとう)を使用します。

胆石症、胆嚢炎
 …胆嚢結石による疼痛に対しては芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)を頓服で使用します。胆嚢炎に対しては大柴胡湯(だいさいことう)柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)四逆散(しぎゃくさん)などの柴胡を軸とした漢方薬を使用します。

膵炎
 …東洋医学の世界では、膵臓という臓器のことを十分に認識できていませんでした。しかし、膵炎が生じた場合には背部痛や発熱などの症状が生じるわけですので、膵炎に対して使用されてきた漢方薬も当然あります。膵炎に対しても柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)が保険適応です。しかし、急性膵炎の場合には飲酒過多や胆管結石が原因である場合がほとんどです。素直に西洋医学的治療を受けた方がよろしいでしょう。
 膵炎に関する漢方治療を調べていくと必ず「痃癖(げんぺき)」という言葉に出会います。これは腹内にかたまりを触れ、腹痛・肩背への放散痛を呈する病態を指す言葉です。そして痃癖のときには延年半夏湯(えんねんはんげとう)が治療薬とされていますが、こちらは保険製剤には存在しません。
 
ここでご紹介した漢方薬はごく一部の代表的なものにすぎません。漢方では西洋医学的診断に左右されることなく、漢方医学的診断によって治療薬を選択します。通常の効能・効果とは異なる使用方法をおこなう場合もありますのでご理解ください。 
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