る安胎薬として重宝されます。
・温清飲(うんせいいん)
…妊娠中の女性がなりやすい手根管症候群による手指の痛みやしびれに対して使用します。
・柴苓湯(さいれいとう)
…妊娠中期以降の高血圧、たんぱく尿は妊娠高血圧症候群と呼ばれます。ひどいむくみとして発
症することもあります。妊娠高血圧症候群は母子ともに危険な合併症を生じる可能性があるた
め適切な対応が求められます。漢方では柴苓湯が利用されます。柴苓湯は習慣性流産の予防と
しても効果があります。
・小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)
…つわりの治療薬として非常によく処方されます。とはいえ、つわりで嘔気のあるときに漢方薬
を飲むのは至難の業です。あらかじめお湯によく溶いておき、冷蔵庫で冷やしておきましょ
う。つわり症状のあるときに少量ずつ内服するのがコツです。
・芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)
…芎帰膠艾湯は女性の止血薬です。冷え症で経血量の多い人向きの漢方薬ですが、妊娠中の子宮
出血に対しても効果があります。
時代劇などでは「産後の肥立ちが悪い」として出産による消耗から回復できずに命を落とす女性が登場します。
現代ではいざとなれば輸液で栄養補給できますが、本来出産という大仕事を終えた後の女性にはアフターケアが必要なのです。
<産後のトラブルに使用される代表的な漢方薬>・四物湯(しもつとう)
…出産は女性の体にとって大きな物質的消耗です。肉体的な消耗を補う漢方薬の基本的な処方が
四物湯です。女性ホルモンに対しても作用します。
・女神散(にょしんさん)
…産前産後の神経症に対して使用されます。のぼせとめまい、そしてガンコな肩こりや頭痛が使
用目標です。
・小柴胡湯(しょうさいことう)
…抗炎症作用や解毒作用があり、急性から慢性の炎症性疾患に幅広く使用される漢方薬です。な
んと適応症に「産後回復不全」があります。
・芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)
…産後の神経症や体力低下など心身の消耗を補ってくれる漢方薬です。月経のトラブルにも利用
できます。「気」を補うことよりも「血(けつ)」を補うことに重点が置かれています。
・芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)
…女性のための止血薬なのですが、産後の不正出血にも活用できます。
・その他
マタニティブルー ➜女神散(にょしんさん)や香蘇散(こうそさん)
産後の腰痛 ➜疎経活血湯(そけいかっけつとう)
産後の消耗 ➜十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
人工授精の技術が進んだ現代でも、漢方薬による体の中からの妊活、体質改善は依然として有効です。
<妊活に使用される漢方薬>
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
…血の巡りの悪い人は妊娠しづらいため、血のめぐりを良くすることから取り掛かります。
血の巡りが悪い人の特徴は「月経痛が強い」「ドロッとした塊が出る」「冷えのぼせがある」
などです。
・温経湯(うんけいとう)
…血(けつ)の通り道である経脈を温めるというネーミングの漢方薬です。多嚢胞性卵巣症候群
に対する有効性が確認されています。虚弱な体質の女性の血(けつ)の補充と血の巡りを改善
します。足は冷えるのに手は温かかったり口唇が乾いているという特徴があります。
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
…安胎薬である当帰芍薬散は妊活でも活躍してくれます。具体的には、血の巡りが悪い女性を
桂枝茯苓丸で改善し、当帰芍薬散を内服して妊娠を成功させるというものです。
当帰芍薬散は血(けつ)の不調と同時に体に水が溜まっている体質に適しています。
・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
…男性不妊に対して頻用されます。何はともあれ現代の男性は疲れがたまっているようです。
パートナーと一緒に妊活する意味でも内服しておくとよいでしょう。
・ED対策
…現代社会で疲れ切った男性には奮い立つ元気すら残されていない場合があります。
補腎丸グループの漢方薬や桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)などの
漢方薬が頻用されます。
補足ではありますが育児トラブルに使用する漢方薬もいくつかご紹介します。
<育児のお悩みに使用する代表的な漢方薬>
・母乳が出ない ➜葛根湯(かっこんとう)
・赤ちゃんが哺乳できない ➜麻黄湯(まおうとう)
・夜泣き ➜甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう) など
ここでご紹介した漢方薬は妊娠・出産のトラブルに使用する漢方薬のごく一部の代表的なものです。実際には症状と漢方医学的診察所見から処方薬が決定されます。
漢方で、からだにやさしく、自然治癒力を高めましょう!