ニキビ(尋常性ざ瘡)は美容面で人生に大きな影響を与え、多くの人にとって悩みの種の一つとなる疾患です。
医学的にはニキビの原因は「アクネ菌」であると言われていますが、問題はアクネ菌が増殖して炎症を起こしてニキビを作ってしまう土壌にあります。土壌つまり肌の環境は、食事や生活習慣の影響を受けるため、ニキビ治療では食生活の改善が大切です。また、ホルモンバランスが皮脂の分泌に影響を与えるため、ニキビは思春期に悪化する傾向にあります。
<治療>ニキビ(尋常性ざ瘡)の治療では肌を清潔に保つスキンケアや生活習慣を整えることが第一です。西洋医学的な治療では外用剤が中心であり、外から攻める治療となりますが、漢方では内服薬による内から攻める治療となります。
<代表的な漢方薬>・
清上防風湯(せいじょうぼうふうとう) 顔や上半身にうっ滞した熱を取り除くことを目標とした薬です。脂ぎった感じがして赤く腫れているようなニキビ(赤ニキビ)に適しています。
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桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) ニキビで顔が赤黒くなっている方や、肌の滑らかさが失われてでこぼこになってしまっているような方に向いています。ニキビは青黒い感じのする青ニキビです。月経周期に増悪する傾向にあります。肌の炎症所見が強い場合には桂枝茯苓丸加ヨクイニンを使用します。
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当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) 冷え症で色白であり、ニキビには艶がなくあまり盛り上がっていない場合に向いています(白ニキビ)。月経周期に増悪する傾向にあります。
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黄連解毒湯(おうれんげどくとう) 漢方の抗炎症・抗生剤です。体にこもった熱を取り除き、かゆみを鎮める効果があります。
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半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう) 口周りに生じるニキビに対して使用します。不摂生な食事や胃腸障害が伴う場合が多いため生活習慣の改善が重要です。
この他にもさまざまな漢方薬がニキビの治療に利用されています。十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)という漢方薬は、漢方における万能皮膚治療薬です。非常にバランスよく作られているため医師のなかでもファンの多い漢方薬です。
とはいえ、漢方治療の基本は「その人に合った漢方薬で治療する」です。このことを「証に随(したが)って治療する」と言います。同じニキビでも治療は一人一人千差万別というのが漢方の面白さでもあり難しさでもあります。