痔核は静脈瘤の一種です*。
直腸末端部や肛門部の静脈の血流がうっ滞することで静脈瘤が形成されます。
長時間座っていることや、排便時に強くいきみすぎてしまうこと、妊娠などをきっかけに発症します。
*痔核の病態にはいまだに不明な点もあり、肛門部分の粘膜下組織の滑脱によって生じるという説もあります。<診断・分類>よく言う「イボ痔」が
内痔核(ないじかく)のことです。直腸内にいぼ状の静脈瘤が生じた状態です。自覚症状はありませんが、排便時に出血することがあります。
直腸と肛門の切り替わる部分(歯状線)よりも外側(肛門側)にできた痔核を
外痔核(がいじかく)と言います。外痔核は大きくなると肛門の外側に顔を出すようになります。元に戻らなくなった状態を痔核嵌頓と言い、血流障害が生じる場合があります。
痔核内に血栓が形成されたために激しい腫脹・疼痛が生じたものを「血栓性痔核」と言います。
「切れ痔」とは排便などの際に肛門が切れてしまう裂傷のことです。
痔核の診断は肉眼的所見および直腸・肛門診の際に指で触って診断します。
重症度は痔核が肛門外へ脱出する状態により診断されます。
なお、歯状線に大腸菌が感染して炎症が起こり、膿のかたまり(膿瘍)が生じたものは肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)と言います。肛門周囲膿瘍が進行して皮膚までトンネルが開通した状態を痔ろうと言います。肛門周囲膿瘍や痔ろうでは膿瘍の位置や広がりを正確に確認することで治療の成功率が高まるため、CTやMRIで詳細な検査をすることが重要です。
<治療>
・生活習慣の改善
長時間座っていない、排便時にいきみすぎない、食物繊維の多い食事をするなどの痔核を悪化させない生活習慣を送ることは重要です。痔核体操というものもあります。また、暖かいお風呂に入って局部を温めることも効果があります。
・保存的治療
痔核による症状を軽減する薬や排便をスムーズにするための下剤などの内服治療をおこないます。局部に使用して症状を軽減するための軟膏や座薬なども頻用されます。
・外科的治療
硬化療法、ゴム輪結紮療法、痔核切除手術などの外科的治療方法があります。
硬化療法は痔核に薬液を注入して痔を固めてしまう治療法です。日帰り手術で行っている施設もあります。再発しても繰り返しやすい治療法です。
ゴム輪結紮療法は痔核の根本をゴムで締め付けて徐々に壊死させていく治療法です。
外科手術にはさまざまな術式が考案されてきましたが、現在では結紮切除法とPPH法(自動縫合器を使用する術式)が主流となっています。痔核は再発(新しい痔核)しやすいこと、手術後の疼痛が強いこと、手術により肛門が狭窄してしまうことなどの理由からさまざまな術式があり工夫されています。外科医としての経験の差が大きく出る領域です。
肛門周囲膿瘍や痔ろうは感染巣を完全に切除することが必要です。一時的には切開・排膿処置をおこないますが再発・再燃しやすいため炎症があるていど治まったところで手術する必要があります。
・漢方治療
痔核に効果のある漢方薬もあります。乙字湯(おつじとう)はまさしく痔のための漢方薬です。このほかにも、痔疾として痔に対する効果が認められている漢方薬は複数存在します。特に、静脈瘤は末梢循環障害であると考え、瘀血(おけつ)に対する治療をすることで痔核を縮小させることができる場合もあります。瘀血によるその他の症状(肌荒れ、目のクマ、肩こり、生理痛、便秘)もまとめて改善することができる点が魅力です。
当院では痔核に対する漢方治療・保存的治療をおこなっております。
外科的治療が必要と判断した際には専門機関へ紹介させていただきます。