不定愁訴
疾患にはそれぞれ特徴的な症状があるものです。
呼吸器の疾病では咳や痰、呼吸苦など
胃腸の疾病では胃痛、食欲不振、吐き気、腹痛、下痢など
泌尿器疾患では血尿、蛋白尿、排尿時痛、残尿感など
糖尿病では高血糖、口渇感、多飲・多尿など
医師は患者さんの訴える(あるいは検査で判明する)症状や身体の異状を積み重ねることで数多ある疾患から診断を絞り込んでいきます。それが医師の技量の一つなのですが、受診するたびに患者さんの訴えがコロコロと変わり診断を絞り込めない状態のことを「不定愁訴(ふていしゅうそ)」と言います。
医師にとって、不定愁訴の患者さんは厄介極まりない患者さんであり、心無い医師などは「気のせいです」の一言で診察を終わらせようとしてしまいます。
しかし、総合診療専門医や漢方医にとってみれば不定愁訴は日常茶飯事のことですし、まさしく腕の見せ所でもあります。
不定愁訴の場合、西洋医学としては以下の大枠を想定しながら検査と診療を進めます。
①自律神経失調症・身体表現性障害 ②内分泌疾患(ホルモン異常)
③不定愁訴症などの精伸疾患 ④複数の疾患が併存している可能性
この中でも②のホルモン異常は薬物や手術によて確実に治療できるため特に重要です。
●甲状腺機障害 …食欲不振、倦怠感、易疲労感、意識障害、うつ状態、認知症、便秘、冷え症
●副腎皮質障害 …食欲不振、倦怠感、易疲労感、意識障害、うつ状態、認知症
●女性ホルモン関係 …倦怠感、易疲労感、月経異常
<検査>
不定愁訴に対する検査は、ありそうな可能性すべてを網羅する方法(一般的な血液検査や各種画像検査)と、少しずつ診断を絞りながらする方法(ホルモン測定のための負荷試験など)の2通りあります。
患者さん側としては次から次へと検査をおこなうためうんざりしてしまうかもしれませんが、治せる身体疾患をきちんと見つけ、器質的疾患ではない機能性疾患や精神疾患であると確定させるためにもぜひご協力いただきたいところです。
一方で漢方医学では、西洋医学的な病気としての診断ではなく漢方医学的な病態・状態の診断と治療をおこないます。
漢方で不定愁訴というと加味逍遙散(かみしょうようさん)がよく使用される薬です。漢方薬は機能性疾患の治療に効果的であり、西洋医学よりも優れている分野の一つです。