本当によくあるご質問が「漢方薬はすぐには効かないから長く飲まないといけないんでしょ?」というご質問です。
漢方薬に対して、このようなイメージを持たれてしまうのは仕方がないことかもしれません。
西洋薬(一般的な薬)とは異なり、漢方薬は複数の生薬の組み合わせで作られています。各生薬にはさまざまな薬効成分(化学成分)が入っていますが、一つ一つの含有量としては微々たるものです。
一般的に、西洋薬は単一の化学物質(薬効成分)から作られています。しかも生薬に含まれる量と比べると圧倒的に多い量です。したがって、西洋薬は(基本的に)飲んですぐに強力な効果が現れます。
では、漢方薬にはそのような単一成分を多量に含むものはないのか…というと、実はあります。
例えば「甘草湯(かんぞうとう)」。のどカゼによるのどの痛みや咳に対して使用される漢方薬ですが、生薬は甘草だけです。
他にも、カゼやインフルエンザに対して頻用される漢方薬のほとんどは1日か2日で治療を終えることを目指して作られています。実際、インフルエンザに対しては西洋医学的治療よりも漢方による治療の方が症状の改善や治癒が早いことが証明されています。
つまり、漢方薬の中には急性疾患に対して使用される、即効性のある漢方薬と、体質改善や慢性疾患に対して使用される、ゆっくりじわじわと効いてくる漢方薬とがあるのです。
漢方薬では生薬から特定の化学物質を抽出して濃縮させることが技術的に困難だったという理由もありますが、根本的には人体や健康に対する考え方の違いが西洋薬と漢方薬の違いを生んでいるように思います。
漢方では「気血水」や「五臓六腑」「陰陽」などさまざまな角度から人体や健康を全体像として捉えます。
したがって問題が起きている一点だけを見るのではなく、常に全体像として、全体の連動や相互関係に注意しながら治療をします。
そのため、複数の生薬を組み合わせることで、治療によって全体のバランスを失ってしまったり副作用が生じることを防ぎつつ治療効果をもたらすように漢方薬は設計されているのです。
★まとめ★
漢方薬のなかには即効性のあるものと、ゆっくりじわじわと効いてくるものとがあります。
症状や病気によって使用される漢方薬は異なりますし、漢方薬に対する反応も人それぞれです。
いまお悩みの症状の原因が比較的シンプルなものであり、身体に十分な自然治癒力がある状態であれば、漢方薬によりすみやかに症状が改善されると思われます。一方で慢性疾患や生まれ持った体質による症状の場合には、全体的なバランスを取りつつ少しずつ補正していく治療になると考えられます。