女性には女性のお悩みがあるように、男性には男性特有の悩みがあります。
女性向きに漢方薬は多く存在しますが、男性向きの漢方薬も当然存在します。
<男性特有のお悩みと漢方薬>・
前立腺肥大症、尿トラブル …前立腺肥大症では、東洋医学でいう「腎(じん)」の機能をサポートする腎気丸グループの漢方薬を使用します。前立腺肥大症による排尿トラブルに加えてほてりや口渇感が強い場合には
六味丸(ろくみがん)を、下半身の冷えが強い場合には
八味地黄丸(はちみじおうがん)を、脚のしびれやむくみがある場合には
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)を選択します。
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男性不妊 …男性不妊の場合には経験的に
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)が使用されます。胃腸から元気にしてエネルギーをみなぎらせる漢方薬です。現代社会に生きる男性は疲れているということなのでしょう。「なにかと落ち込んでしまうものを持ち上げる効果」があるとも言われます。また、性機能の低下と考え腎気丸グループの漢方薬を併用するなど、漢方医学的に衰えている機能をサポートする治療をおこないます。
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インポテンツ …インポテンツは男性の自尊心を大きく損なう症状であり、その重大さは男性でなければ理解できないものです。加齢による性機能の衰えと動脈硬化が原因の場合には八味地黄丸を中心に治療をおこないます。精神的な要因が強い場合には
桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)や
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)など、「気」の異常を治療することに重点を置きます。また、胃腸虚弱のために気を十分に作り出すことができない体質では
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や
小建中湯(しょうけんちゅうとう)などの漢方薬から選択します。
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AGA(男性壮年性脱毛症) …AGAに対する漢方治療は確立されていませんが、フィナステリドやデュタステリドなどの西洋薬が男性ホルモンの作用を抑制したり前立腺肥大症治療薬であることから、八味地黄丸などの腎気丸グループに効果が期待されます。さらにストレス対策として柴胡(さいこ)を含有する漢方薬や、血行改善・血流促進を目的として駆お血剤を使用します。AGAとなる男性では体に熱がこもっていることも多いため、熱を冷ます漢方薬も使用する場合があります。このように総合的な視点で複数の漢方薬を使用しながらAGAの治療に当たりますが、今のところ全国的に確立された処方パターンはないようです。
当院では「腎気丸+ストレス対策(柴胡剤または桂枝加竜骨牡蛎湯)+気血相補剤(十全大補湯、加味帰脾湯、黄耆建中湯)」の組み合わせを中心に複数漢方の併用を推奨しています。
・男性更年期障害(LOH症候群) …女性の更年期障害と同様に、男性も加齢による男性ホルモン(テストステロン)の分泌量低下により心身のさまざまな症状があらわれます。下に診療ガイドラインに基づいた自己点検リストを掲載しました。体力の低下や意欲の低下、性機能の低下などが主な症状ですが、うつ病などの疾患との鑑別も重要です。男性更年期であると決めつけずに、適切な医療機関での診療を受けましょう。男性更年期の諸症状に対しても六味丸や八味地黄丸などの腎気丸を中心とした漢方薬が活用されています。
ここでご紹介した漢方薬はごく代表的なものに過ぎません。
漢方診療ではお一人お一人の体質を考慮してベストマッチする漢方薬を選ぶよう心がけています。
ぜひお気軽にお問い合わせください。