小児専用の漢方薬は存在しないため、体格に合わせて内服量を調整して治療します。その点ではエキス剤が非常に便利です。
一般論としてこどもの疾患は経過が早く、自己治癒力も高いため成長により自然に改善することも多いという特徴があります。
身体的な疾患に限らず、こどもの心身症に対する漢方薬も再評価されています。代表的な疾患や症状と漢方薬についてご簡単にご紹介いたします。
<こどもの悩み・症状>① おなかが弱い
・甘いものが好きで冷えるとすぐにお腹が痛くなり下痢になる ➜人参湯
・過緊張による便秘や下痢 ➜小建中湯
② カゼをひきやすい
・虚弱な体質でカゼをひきやすい子 ➜桂枝湯(ニッキ味)、香蘇散(シソ味)
・カゼをひくとお腹が痛くなりやすい子 ➜小建中湯
・吐くカゼ ➜五苓散
・扁桃腺が腫れやすい子 ➜小柴胡湯、小柴胡湯加桔梗石膏
・神経過敏で扁桃やリンパが腫れやすい ➜柴胡清肝湯
・夏のプール熱 ➜黄連解毒湯
・麻疹や風疹の初期でまだ発疹が目立たない ➜升麻葛根湯
③ 神経過敏
・かんしゃく持ちでイライラしやすい ➜抑肝散
・泣き虫でヒステリー ➜甘麦大棗湯
④ 朝起きられない・起立性低血圧 ➜苓桂朮甘湯
⑤ 湿疹
・乳幼児の湿疹 ➜治頭瘡一方
・汗疹(あせも) ➜消風散
・ニキビ ➜清上防風湯
・アトピー性皮膚炎 ➜葛根湯、治頭瘡一方、黄連解毒湯など
(アトピー性皮膚炎のページもご覧ください)
⑥ 気管支喘息
発作時には麻杏甘石湯や神秘湯などの麻黄含有剤の気管支拡張効果を利用します。
寛解期には小建中湯や柴朴湯など体質改善治療をおこないます。
⑦ 腎炎・ネフローゼ症候群
柴苓湯によってステロイド剤の減量や離脱、再燃予防がある程度可能です。
慢性的な場合には黄耆建中湯や補中益気湯などの補剤による全身的なサポートをおこないます。
⑧ 心身症
・怒りやすく攻撃的な性格のこどものチック ➜抑肝散
・夜泣き ➜甘麦大棗湯
・ねぼけ(夜驚症) ➜柴胡加竜骨牡蠣湯、桂枝加竜骨牡蛎湯
・心因性発熱 ➜補中益気湯、柴胡桂枝湯
・周期性嘔吐症 ➜五苓散
・心因性の腹痛 ➜小建中湯
・おねしょ(夜尿症) ➜六味丸
★服薬の工夫★
お子さんに漢方薬を飲んでもらうにあたっての難点が「味とにおい」です。いくつかの工夫があります。
・シャーベット(夏)やゼリー(冬)にする
・はちみつと混ぜる
・コーヒー味やココア味の飲料と混ぜる
・グレープフルーツジュースで飲む(一部の漢方薬)
市販の内服サポート食品を利用することも有効です。お子さんには漢方薬を飲んでもらえることが何よりも重要です。