免疫力という言葉は、日常的にも広く使用されている一方で医学的には非常に曖昧かつ不正確な表現です。
免疫力という言葉には①細菌やウイルスなどの外的な病原性微生物に対する抵抗力、という使い方と②自分の体内でおきた問題を制御する能力、の2つの用い方をされており時にはこの両者が混合して使用されています。
一方で医学的には「免疫力」を意味する単一の指標というものはなく、白血球数や炎症のマーカーなどが状況に応じて使い分けられています。しかし、白血球数が基準値の範囲内にあったとしてもインフルエンザや新型コロナのような感染症にかかる人もいればかからない人もいるわけで、単純に数値化することができるものでもなさそうです。
免疫力とは、人間が本来もっている健康を維持するための総合的な機能(能力)の表現型であって、日常感覚的には「元気で健康か」「人生の長い期間において疾病にかかっていないか」などかたちで感覚的に理解されるものです。
東洋医学では「気」という概念があり、生命力であるとか自然治癒力、あるいは上記①②のような免疫機能、恒常性維持能力などが包括されています。また、「病邪」という概念もあり、人間を襲って病気にする外敵なエネルギー(要因)として理解されています。
免疫力という言葉は西洋医学よりも東洋医学のほうがニュアンスとして近いように感じます。
東洋医学における「免疫力」=「気」
病邪に抵抗する生命力が「気」であり、身体の各機能が調和がとれて正常に機能するために必要なのも「気」であるため、免疫力という言葉は「気」に近い感覚で理解できます。
免疫力が低下している状態とは「気」が低下している状態であり、「気」の量が不足していたり「気」の流れに問題がある状態です。
そのため、東洋医学において免疫力低下状態に対しては気を補充し、気の巡りを改善するようアプローチします。
<気を補充する漢方薬>
・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
・四君子湯(しくんしとう)
・帰脾湯(きひとう)
・黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)
・十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
・人参養栄湯(にんじんようえいとう)
これらは代表的な漢方薬です。