胃や十二指腸の粘膜が炎症などの理由で深く欠損してしまった状態が胃潰瘍(十二指腸潰瘍)です。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因はさまざまであり、複数の要因が重なることで発症する場合もあります。近年では「ピロリ菌」という胃粘膜上に定着する細菌が重視されていますが、不摂生な生活習慣、NSAIDsと言われる解熱鎮痛剤の使い過ぎ、ストレスや過労、飲酒や喫煙などが胃潰瘍(十二指腸潰瘍)の原因となります。
<症状>
胃潰瘍(十二指腸潰瘍)のおもな症状は腹痛(胃痛)です。
教科書的には、胃潰瘍の場合には食事直前の空腹時に痛みが増し、十二指腸潰瘍では食直後に痛みが増すとされていますが必ずしもこの通りではありません。
潰瘍部分から出血がある場合には貧血を発症したり、便が墨汁のように真っ黒になったりします(タール便)。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍を放置した場合には胃や十二指腸に穴が開くまで潰瘍が進行することがあります。胃潰瘍穿孔または十二指腸潰瘍穿孔という状態であり、腹膜炎を併発して重症化します。基本的には緊急手術が必要になる状況です。
<診断・治療>
胃潰瘍(十二指腸潰瘍)を症状から推測診断することは可能ですが、確定診断には上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)で潰瘍の部位・個数・大きさを確認することが必要です。
胃潰瘍穿孔を疑う場合には腹部CTで腹膜炎などの状況と合わせて診断します。
ピロリ菌の有無の診断は①内視鏡検査時に組織サンプルを採取する方法、②呼気テスト、③血液検査によって診断することができます。このうち呼気テストは除菌治療の効果判定にも利用されます。ピロリ菌の治療には抗生物質と制酸剤を組み合わせた治療をおこないます。
胃潰瘍(十二指腸潰瘍)の治療では胃酸の分泌を抑制する制酸剤を中心に、胃粘膜保護剤などを組み合わせて治療をおこないます。
かつて、胃潰瘍を繰り返す場合には手術により胃を部分切除しましたが、現在では優秀な内服薬のおかげでほとんど手術することはありません。
胃潰瘍(十二指腸潰瘍)は生活習慣やストレスの影響も強く受けます。内服治療とともに生活習慣やストレス対策を見直すことも必要でしょう。