起立性調節障害/起立性低血圧症
起立性調節障害は、自律神経系の異常による疾患です。
症状としては、立ちくらみやめまい、失神、朝に起きることができない、血圧の低下、動悸、頭痛などがあります。
発症には心理面や環境面の要因が関わっており、自律神経系がまだ不安定である、小中学生に多くみられます。
その名のとおり、起立によって生じる血圧の低下を調整するべき自律神経の不調が原因です。その結果、血圧が下がったままで脳の血流が不足し、症状があらわれます。
低血圧を生じる疾患はほかにもあるため、きちんと検査を受けておくことは重要です。
治療には薬物治療と非薬物治療があります。
<非薬物療法>
・塩分・水分を多めに摂取する
・急に立ち上がらず、頭を下げてゆっくりと立ち上がる
・規則正しい睡眠・起床の生活リズムを作る
・運動をして、筋力低下を防ぐ
<薬物療法>
薬物治療としては昇圧剤(血圧を上げる薬)を使用しますが、成長期のこどもへの長期的な影響を考えると安易には使用できません。
起立性調節障害に対してよく使用される漢方薬に苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)があります。茯苓、桂皮、蒼朮、甘草の4つの生薬でできているためそれぞれ一文字ずつとって苓桂朮甘湯という名前です。
この漢方薬は胃腸の虚弱がベースにあり、冷えと水の巡りの異常が関与する諸症状に対して効果がある漢方薬です。具体的にはめまい、ふらつき、動悸、息切れ、頭痛、疲れやすい、食欲がない、胃がちゃぽちゃぽする、手足が冷えるなどの症状が目安です。成長期のお子さんにもご高齢者にも使用できる漢方薬です。
苓桂朮甘湯を使うような症状のうえに貧血や出血症状がある場合、更年期症状がある場合などは四物湯(しもつとう)という漢方薬と苓桂朮甘湯を併用します。この組み合わせはすでに連珠飲(れんじゅいん)という名前がついており、ひとつの漢方薬として確立されています。
このほかにも、疲れやすさや食欲の低下などの症状を目標に補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や六君子湯(りっくんしとう)などの漢方薬が使用される場合もあります。
漢方では病名にこだわらずに症状や体質に合わせて漢方薬を選択します。ここでご紹介している漢方薬が必ずしも自分に合ったものであるとは限りません。長引く症状にお困りのかたはぜひ当院にご相談ください。