これまで自律神経失調症と呼ばれていた疾患について、現在では「身体症状症」という名称へと切り替わりつつあります。
医師にとっては便利な表現でしたが、自律神経失調症という言葉は非常にあいまいな表現であり濫用されていた表現でした。
自律神経とは、交感神経と副交感神経をまとめた呼び方です。
交感神経と副交感神経は、人間が意識しなくとも24時間365日、自動的に身体各機能のバランスを取り続けてくれています。
自律神経が正常に機能することで、わたしたち人間は「当たり前の日常」を送ることができるのです。
わかりやすく言えば、交感神経は「活動」のための自律神経であり、副交感神経は「休息」のための自律神経です。
これらの自律神経がうまく機能しなくなることを「自律神経失調症」と呼びました。
医療現場では、患者さんの訴えるさまざまな症状を合理的に説明する原因や病態が見つからない場合があります。
そのような原因不明の身体症状をひとまとめに説明する言葉として「自律神経失調症」は非常に便利な言葉でした。
尚、身体症状症(自律神経失調症)と心身症はまた異なる概念のものです。
誤解を恐れずにわかりやすく説明すると、身体症状症(自律神経失調症)は肉体的な疾患ではなく機能の不調(なんとなくうまくいかない)状態です。
いっぽう、心身症はその発生に心理的・精神的要因(ストレス)が関与している肉体的な疾患です(詳細については心身症のページもご覧ください)。
身体症状症(自律神経失調症)は、機能の不調であるため、血液検査や胃カメラ、CTなどの肉体的な検査をいくらしても原因がみつからない場合があります。また、ストレスの関与がなくても発症する場合があります。
身体症状症(自律神経失調症)に対して使用される代表的な漢方薬をいくつかご紹介します。
・柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
・加味逍遙散(かみしょうようさん)
・抑肝散(よくかんさん)
・黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
・桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
・苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
ここでご紹介した漢方薬はあくまで代表的なごく一部のものです。
陰陽五行や気血水のバランスという視点で人体や健康を理解しようとする東洋医学は、身体症状症(自律神経失調症)に対して一定の治療効果を発揮するものが数多くあります。
しかし、自律神経失調症を漢方薬だけで治すのではなく、日常生活のなかでも健康的な生活を送るなどの工夫が重要です。