新前橋すこやか内科・漢方内科クリニック|内科・漢方内科、外科、補完・代替医療(自由診療)

新前橋すこやか内科・漢方内科クリニック

療養中にも使えるコロナ対策漢方!

新型コロナウイルス感染症は収束の方向に向かいつつありますが、入院対応できる医療機関に限りがあるためPCR陽性判定となり自宅やホテルで療養されている方々の管理に問題が生じています。

無症状でPCR陽性のかたは、自宅やホテルでただただ待つだけになってしまうため大いに不安の募るところではないでしょうか。このような状態で何かできることはないのでしょうか?

漢方の聖典とされる「傷寒論(しょうかんろん)」は、主に急性期感染症の診断と治療について書かれています。感染症はむかしから人命を脅かす最大の脅威でしたが、漢方は現在に至るまで感染症と向き合ってきた医学とも言えます。

以前の記事と重複してしまいますが、近年の国際的に流行した感染症と漢方薬について復習しておきたいと思います。

2002年から2004年にかけて流行したSARSコロナウイルスに対しては板藍根(ばんらんこん)玉屛風散(ぎょくへいふうさん)が活用されました。板藍根は保険適用外の漢方薬ですが、トローチ状のエキス剤がありのど飴感覚で使いやすい生薬です。健康食品となりますが当院でも取り扱い中です。玉屛風散は黄耆(おうぎ)、防風(ぼうふう)、白朮(びゃくじゅつ)の三種類の生薬から構成されるシンプルな漢方薬です。この組み合わせ、保険診療でつかうエキス製剤にありそうでない組み合わせなのですが、保険外の漢方として小太郎製薬会社さんが販売しています。

2012年から2013年にかけて流行したMERSコロナウイルスに対しては銀翹散(ぎんぎょうさん)麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)が有効でした。銀翹散も保険適用外の漢方薬で、ドラッグストアでも売っています。喉の焼けつくような痛みと乾燥のあるノド風邪の特効薬です。当院でもお取り扱いしております。麻杏甘石湯は気管支炎や気管支喘息の咳や痰を治す薬です。

そして新型コロナウイルスに対して、中国では双黄連口服液(そうおうれんこうふくえき)とそのバリエーションの漢方薬が活用されました。双黄連は金銀花、黄芩(おうごん)、連翹(れんぎょう)という三種類の生薬から構成されているシンプルな漢方薬です。

金銀花は漢方でいうところの風熱(ふうねつ)という性質の病邪に対して効果があります。カゼのことを漢字で「風邪(ふうじゃ)」と書きますね。私たちが現代の感覚で「カゼ」として捉えている病気を引き起こす原因が「風邪(ふうじゃ)」と考えられていたわけです。同様に、熱をもった症状を引き起こす原因が「熱邪(ねつじゃ)」と考えられていました。先日SNSでもご紹介したように、金銀花エキスが含まれているのど飴がホームセンターや薬局で市販されています。黄芩は熱邪や湿邪に対抗する力があり、連翹は炎症をしずめ、排膿を促す効果があります。

この双黄連のバリエーションと考えられる漢方薬(中医薬)の金花清感(きんかせいかん)顆粒連花清瘟(れんかせいおん)カプセルが活用されたのですが、この2つの漢方薬を別の角度から見ると麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)という漢方薬のバリエーションとも考えることができます。つまり「双黄連+麻杏甘石湯」にさらにオプションが加えられたものと言えます。
例えるならば、ハンバーグ定食とエビフライ定食を合わせたハンバーグ+エビフライ定食に、さらにお好みでカニクリームコロッケやトンカツが追加されたセットメニューのようなものです。

なんだかとても脂っこい話になってしまっていますが、もう1つ、麻杏甘石湯から派生した漢方薬で、新型コロナの治療に威力を発揮したものがあります。

清肺排毒湯(せいはいはいどくとう)というものです。こちらは日本の学会でも注目されており、インターネット上でも名前がすぐに挙がってくるのでご存知のかたも多いかもしれませんが、実に21種類もの生薬から構成されている漢方薬です。もはやミックスフライ定食を通り越して串揚げ食べ放題みたいなことになってしまっています。

清肺排毒湯を日本の漢方エキス剤で完全に再現することはできませんが、複数の漢方薬を組み合わせることで似たような構成をつくることはできます。さながら一流レストランの再現レシピみたいなものです。2通りの方法があって、1つは大青竜湯+小柴胡湯+五苓散+射干麻黄湯+橘皮枳実生姜湯というものです。けっこう大盛りです。

もう1つは麻杏甘石湯+胃苓湯+小柴胡湯加桔梗石膏というものです。こちらの方がシンプルですね。こじゃれたカフェのランチ定食風です。

個人的にはここに銀翹散や板藍根を追加してみたいです。板藍根も銀翹散も「のどの腫れ・痛み・熱感」に効果的ですし、コロナウイルスに対する実績があるので効果を期待できます。特に銀翹散には金銀花と連翹の2つが含まれているので、新型コロナにも一定の有効性があると考えられます。定食だけだと野菜不足なのでサラダを追加するイメージでしょうか。

無症状で自宅やホテル療養中にこれらすべての漢方薬を内服する必要は当然ありません。ですが何もせずただ時間が過ぎるのを待つというのはストレスが大きいものです。免疫力を高めたり、発症を抑えるという目的で漢方薬を少量ずつ内服してみるという方法も考えられます。もしもなんらかの症状や体調の変化があるのならば、漢方薬がお役に立てるかもしれません。

漢方治療は、病名という先入観をもつことなく患者さん一人一人の状態を細やかに診察して漢方薬や生薬を調整しなければなりません。今回ご紹介したようなセットメニューは処方決定の目安として活用できるのではないかと思います。

自宅療養漢方についてご相談される方はお気軽にお問い合わせください。


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