春は揺さぶられる季節
2021/4/26冬の厳しい寒さから少しずつ解放され、暖かい日差しとともに草花が咲き誇り、世界の色合いが鮮やかになる春。
しかし、青春という言葉があり、東洋医学においても春の色は「青」とされています。
そして英語では抑うつ気分のことをblue(ブルー)と表現します。
季節性うつ病(季節性感情障害)という疾患が存在することからも、春という季節は実は精神的に不調になりやすい季節であると理解されています。
もっとも大きい要因は季節の変化によるものと思われますが、日本人の場合には社会環境の変化も重なってくるため見えないストレスの多い季節ではないでしょうか。
人間は変化に弱いものです。
まさしく春は“揺さぶられる”季節なのです。
新しい職場や学校など環境の変化とストレスにうまくついていけずに抑うつ気分や不安感、不眠症、動悸、神経過敏などの自律神経症状が出現する状態は適応障害の可能性があります。
一方で心の痛みが身体的な痛みとなって表現されるタイプのかたもたくさんいらっしゃいます。だるさ、めまい、頭痛、のどのつかえ感、胃腸の不調、不眠などの症状はあるものの、診察や検査をしても特に異常を認めません。しかし、とにかくご本人にとっては不調感が強い点も特徴です。
このように「患者は身体症状を訴えるが、その訴えに見合う異常を認めない」状態を身体表現性障害と言います。
また、身体的な疾患であっても心の影響を大きく受けるものがあります。
消化性潰瘍、過敏性腸症候群、逆流性食道炎、高血圧、不整脈、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、糖尿病、関節リウマチ、顎関節症、月経前症候群、腰痛症などなど、挙げればきりがありません。これらは心身症と言われます。
こういった症状のかたが内科を受診すると身体的な症状にたいする対症療法的な治療をされ、一方で精神科を受診すると抗うつ剤や抗不安薬を処方されるものの身体的な症状の治療を受けることができません。
そこで近年では心療内科を掲げる医療機関も増えてきて、心身共に一元的に治療をするような潮流になりつつあります。そしてこの姿勢は取りも直さず漢方が2000年前からおこなっていることです。
適応障害や身体表現性障害、心身症などを漢方薬で治療する場合には、やはり問診や診察所見によって「証」を確認して使用する漢方薬を決定します。
漢方薬は「何を重視するか、どこに重点を置くか」によって生薬の組み合わせや構成が変わるため、たくさんのバリエーションがありますので、そのかたに合った漢方薬を選び出す必要があります。
「不安感で受診したのになんで腹を触られるんだ?」と思うかたもいらっしゃるかもしれませんが、それが漢方の診察・診断方法ですのでご容赦ください。
やや専門的な話になってしまいますが、私がふだん何を考えながら漢方薬を選んでいるか、少しご紹介してみようと思います。
まず精神安定作用のある竜骨(りゅうこつ)と牡蛎(ぼれい)という生薬の必要性についてです。これらは精神安定作用、神経の過敏性や動悸を抑えてくれる効果があります。腹診では大動脈の拍動を触れます。
次は柴胡(さいこ)という生薬。
ストレス耐性を高めて気の巡りを改善してくれます。ほかにも抗炎症作用や抗アレルギー作用、ステロイド類似作用などさまざまな効果がある生薬です。腹診では肋骨周りの抵抗感や圧迫感を確認します。
漢方の世界ではストレスが籠って熱となり火となるという考え方もします。
そのような火(熱)がこもるかたには熱を下す生薬である黄連(おうれん)や黄ゴンという生薬を考えます。腹診ではみぞおちを押さえたときの抵抗や不快感を認めます。
実際にはこの他にも「この生薬が入っていたほうがいいかな?」などと考えながら漢方薬を選出しています。
すぐには効果がないと思われがちな漢方薬ですが、皆様にピッタリの漢方薬を選んでお役に立てればと思っています。
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しかし、青春という言葉があり、東洋医学においても春の色は「青」とされています。
そして英語では抑うつ気分のことをblue(ブルー)と表現します。
季節性うつ病(季節性感情障害)という疾患が存在することからも、春という季節は実は精神的に不調になりやすい季節であると理解されています。
もっとも大きい要因は季節の変化によるものと思われますが、日本人の場合には社会環境の変化も重なってくるため見えないストレスの多い季節ではないでしょうか。
人間は変化に弱いものです。
まさしく春は“揺さぶられる”季節なのです。
新しい職場や学校など環境の変化とストレスにうまくついていけずに抑うつ気分や不安感、不眠症、動悸、神経過敏などの自律神経症状が出現する状態は適応障害の可能性があります。
一方で心の痛みが身体的な痛みとなって表現されるタイプのかたもたくさんいらっしゃいます。だるさ、めまい、頭痛、のどのつかえ感、胃腸の不調、不眠などの症状はあるものの、診察や検査をしても特に異常を認めません。しかし、とにかくご本人にとっては不調感が強い点も特徴です。
このように「患者は身体症状を訴えるが、その訴えに見合う異常を認めない」状態を身体表現性障害と言います。
また、身体的な疾患であっても心の影響を大きく受けるものがあります。
消化性潰瘍、過敏性腸症候群、逆流性食道炎、高血圧、不整脈、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、糖尿病、関節リウマチ、顎関節症、月経前症候群、腰痛症などなど、挙げればきりがありません。これらは心身症と言われます。
こういった症状のかたが内科を受診すると身体的な症状にたいする対症療法的な治療をされ、一方で精神科を受診すると抗うつ剤や抗不安薬を処方されるものの身体的な症状の治療を受けることができません。
そこで近年では心療内科を掲げる医療機関も増えてきて、心身共に一元的に治療をするような潮流になりつつあります。そしてこの姿勢は取りも直さず漢方が2000年前からおこなっていることです。
適応障害や身体表現性障害、心身症などを漢方薬で治療する場合には、やはり問診や診察所見によって「証」を確認して使用する漢方薬を決定します。
漢方薬は「何を重視するか、どこに重点を置くか」によって生薬の組み合わせや構成が変わるため、たくさんのバリエーションがありますので、そのかたに合った漢方薬を選び出す必要があります。
「不安感で受診したのになんで腹を触られるんだ?」と思うかたもいらっしゃるかもしれませんが、それが漢方の診察・診断方法ですのでご容赦ください。
やや専門的な話になってしまいますが、私がふだん何を考えながら漢方薬を選んでいるか、少しご紹介してみようと思います。
まず精神安定作用のある竜骨(りゅうこつ)と牡蛎(ぼれい)という生薬の必要性についてです。これらは精神安定作用、神経の過敏性や動悸を抑えてくれる効果があります。腹診では大動脈の拍動を触れます。
次は柴胡(さいこ)という生薬。
ストレス耐性を高めて気の巡りを改善してくれます。ほかにも抗炎症作用や抗アレルギー作用、ステロイド類似作用などさまざまな効果がある生薬です。腹診では肋骨周りの抵抗感や圧迫感を確認します。
漢方の世界ではストレスが籠って熱となり火となるという考え方もします。
そのような火(熱)がこもるかたには熱を下す生薬である黄連(おうれん)や黄ゴンという生薬を考えます。腹診ではみぞおちを押さえたときの抵抗や不快感を認めます。
実際にはこの他にも「この生薬が入っていたほうがいいかな?」などと考えながら漢方薬を選出しています。
すぐには効果がないと思われがちな漢方薬ですが、皆様にピッタリの漢方薬を選んでお役に立てればと思っています。
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