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パン食をやめると中性脂肪が下がる

2022/8/21
「こんなに簡単に治せる『生活習慣病』」シリーズ第4弾です。

生活習慣病はその名のとおり生活習慣がその発症や治療経過に大きな影響を与えます。
このシリーズでは西洋医学的な標準的治療ではない方法により、大きな治療効果を挙げることに成功した事例についてご紹介していきたいと思います。

今回ご紹介するかたは中性脂肪に悩む50歳以上の女性です。

もともと防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)は内服されていましたが
「年末年始の不摂生で中性脂肪が400を超えた!」
とのことでご心配になり来院されました。
以前から高めではあったものの、今回一気に上昇したとのことでした。なお、血糖値の水準であるHbA1cは6%台後半で推移しておりました。

(注)2型糖尿病の診断:①空腹時血糖値または随時血糖値が基準値を超えている、②HbA1cが6.4%以上 この①②をともに満たすと2型糖尿病と診断されます。

詳しくお話をうかがってみますと
「パンが大好きで毎日のように食べる。ことによっては高級生食パンを2日で1斤食べてしまう」
とのことでした。さすがに食べすぎのようです。

最近、本当にパン屋さんが増えて、あっちにもこっちにもおしゃれなお店ができています。高級生食パンも一世風靡しましたが、今は同じような業態のお店をあちらこちらで見かけるようになりました。パン屋業界の競争は恐ろしく厳しいのではないだろうか…と余計な心配をしてしまいます。

さて、中性脂肪が高値のかたは単純炭水化物を摂取しすぎている可能性をまず第一に考えます。
今回ご紹介したかたの場合にはパンでしたので、まずはパンを食べるのを控えていただきました。

ご本人様も「中性脂肪400」という数字にだいぶ不安になっておりましたので、積極的にご協力いただくことができました。

この他にも野菜の摂取量を増やすことや適度の運動習慣を身につけることも無理のない範囲でお願いしました。

漢方薬としては以前から使用している防風通聖散を継続し、その他の症状に合わせて麦門冬湯(ばくもんどうとう)や六味丸(ろくみがん)を適宜使用しました。

結果としては2か月後の血液検査で中性脂肪は167mg/dlまで低下しました。基準値まであと一歩です。

その後、やや気が緩んでしまったとのことでさらに6ヵ月後の中性脂肪は223mg/dlと上昇してしまいましたが、努力の甲斐が別のところに現れてHbA1cが6.1%になりました。糖尿病治療薬は使用しておりませんが、パン食を減らすことで血糖値の改善にもつながりました。

パンの何がダメかというと、まずは精白小麦粉を使っている点です。
単純炭水化物と言われる状態であり、糖の吸収が早く、血糖値も上昇しやすい。そして余分な血糖が中性脂肪として保管されてしまいます。
しかも現代の小麦は品種改良の結果、グルテンが本来の小麦よりも大量に含有される品種となっているようです。これではデメリットの方が大きくなってしまいます。

惣菜パンや菓子パンではチーズや油、糖分を必要以上に使用しているパンが多いことも問題です。
バターの含有量も非常に多い場合があり、さらに油で揚がっているパンもありますので、健康にとってはデメリットが大きすぎます。
バターを使用していればまだ良心的で、マーガリンや高度に加工された植物油などを使用している場合もあり、原材料を確かめなければ恐ろしくて食べることができません。

パンを食べるときには基本的にライ麦100%のパンまたは全粒粉100%のパンを食べるとよいと思います。ドイツなどEU圏ではごく普通に流通しており、近所のちょっと高級なスーパーでも販売されています。しかしそれなりに香りと味のクセがあるので好みは大いに分かれるところです。

そういったパンが入手できない場合には、できる限り砂糖や油脂を使用しておらずナッツ類やドライフルーツを使用したドイツ系ハードパンを選びます。ハードパンの場合にはよく噛んで食べることになり、顎も鍛えられるし口腔での事前消化も十分におこなわれるため一石三鳥です。

嗜好品とはさまざまな工夫と気遣いをすることで細く長く付き合っていきたいものですね。

ちなみに群馬には知る人ぞ知るマックスゲルソン療法で愛用されることの多い無塩全粒粉パンを日常的に販売していらっしゃるパンの名店があります。
大変喜ばしい限りです。


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カロナールがない!でも・・・

2022/8/6
新型コロナ感染が拡大したこととワクチン接種時の発熱対策として、比較的安全な解熱鎮痛剤であるカロナール(アセトアミノフェン)の消費が進んでいます。

ついに出荷調整という事態に入り、全国的に新規の入荷が難しくなっています。
出荷調整になるということは、薬局や医療機関に対して、過去の納入実績に応じて一定数しか納品されないということです。つまり、需要が増えたからといってその分取り寄せることができないわけです。

ということは、感染症を発症したり、なんらかの疼痛性疾患になってカロナールが必要な人が新たに発生しても、その人たちが使用できるカロナール(アセトアミノフェン)は無いということです。

カロナールだけが解熱鎮痛剤ではないので、ロキソニン(ロキソプロフェン)やセレコックス(セレコキシブ)などのNSAIDsと呼ばれるグループの解熱鎮痛剤へと需要がシフトしつつあります。これでなんとかなればいいのですが、このまま感染の勢いが治まらないとNSAIDsも供給不足になってしまう可能性がある、というのが最近の状況です。

こんな状況の中で、コロナは風邪に罹った際の漢方薬の使用が増えているようです。
最近ではドラッグストアでも漢方薬を取り揃えているところも増えましたので、一般の方で漢方薬を買っているかたもいらっしゃるでしょうし、漢方の使用経験があまりない医師のかたからの処方も増えているのではないかと推測されます。

さて、ここで怖いのはコロナや風邪のような感染症の発症初期において、不適切な漢方薬を使ってしまうと体調を大きく崩してしまう危険性があるということです。

特に注意しなければならないのが麻黄湯(まおうとう)という漢方薬です。
この漢方薬はインフルエンザに使用されるイメージが広まっていましたが、きちんとした使い分けが必要な漢方薬です。

麻黄湯を使用するべき状況は①感染の初期(発症から1、2日ていど)であること、②発熱、悪寒、体のふるえ、筋肉痛や関節痛などの症状があること、そして③発汗していないこと、です。

発汗していないことがとにかく大切です。

漢方の理論では、感染症になった際に、発汗を促すことで病邪を体外へと追いやるという考え方をします。麻黄湯は、いわば戦闘状態になってすべて閉門してしまっている肌に対して、病邪に抵抗する力を鼓舞すると同時に、開門して体外へと追いださせるように作用する薬です。

みなさまは熱を出したときにカロナールやロキソニンを内服したら、熱が下がるとともに大量に発汗した、という経験はないでしょうか?
それと似ていますね。

発汗すると病邪を追いだせるならそれでいいじゃないか、と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、発汗しているときに麻黄湯を使ってしまうと、逆に発汗を止められなくなってしまうのです。発汗が止まらないと、体表面の気も漏れ出してしまいます。これではかえって病気と闘う力が無くなってしまいますし、人体の気そのものも失ってしまうことになるので危険というわけです。

麻黄湯は「解表剤(げひょうざい)」というグループの漢方薬です。
その名のとおり「(体)表を解(放)する」という作用を持っていますので、それを使うべきときというのは、表が閉じているときなわけで、その指標となるのが「発汗していないこと」なわけです。

また、麻黄湯は体力がある患者さんに使うべき薬です。体力がちゃんとある、またはきちんと高熱を出して体がガクガク震えるけれども食欲は意外と普段とおり、という患者さんに適している薬です。

麻黄湯を虚弱な方が利用してしまうと、発汗は止まらないわ、プソイドエフェドリンのせいで心臓はバクバクして苦しいわ、胃の調子は悪くなるわで、それはもう重篤な状態になりかねないのです。

コロナや風邪、インフルエンザなどに罹り、発症すぐの時点で発熱、悪寒、頭痛などの症状があるけれども汗は出ているという場合には桂枝湯(けいしとう)という漢方薬を選択すべきです。

しかし、これもまた桂枝湯は桂枝湯を使うべき人に使わなければなりません。
このように、漢方薬はウイルス性感染症に非常に有効な薬なのですが、きちんと見定めて選択しなければなりません。

解熱鎮痛剤が無いからと言って、むやみやたらに漢方薬を使用してしまうと取り返しのつかないことになってしまいかねません。どのような薬も、正しい使い方で使用する必要があります。


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