新前橋すこやか内科・漢方内科クリニック|内科・漢方内科、外科、補完・代替医療(自由診療)

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がん悪液質には六君子湯を!

進行がんや再発がんが徐々に体中に広がっていくと、がん組織が正常な細胞を分解したり、栄養を奪い取ったりして、気が付かないうちに体重が減っていってしまったり、筋肉がみるみる痩せ細っていってしまったり、怠くて何もする気がなくなったりしてしまいます。

この状態を「悪液質(カヘキシー)」と言います。
悪液質(カヘキシー)という言葉はもっと古くからある言葉なのですが、最近ではもっぱらガンによる悪液質を意味しています。

がんによる悪液質は、がん組織によって人体が消化・吸収されているような状態であり、この状態が進んでいくとどんな治療をしてももはやガンを治すことができない事態に陥ってしまいます。

医学界ではこの悪液質をどう食い止めるかがホットな話題なのですが、そんな悪液質に対する世界で唯一の薬がエドルミズ錠(一般名:アナモレリン塩酸塩)です。

エドルミズ錠はグレリンというホルモンのような作用をする薬です。グレリンの受容体の活性化を介して成長ホルモンの分泌を促進することで食欲を高めます。成長ホルモンが分泌されると、筋タンパクの合成も促進されるため、体重・筋肉量の増加も期待できるのです。

気になる適応は現時点では非小細胞肺癌、胃癌、膵癌、大腸癌などの一部のがんによる悪液質に限定されていますが、今後適応は拡大していくことになるでしょう。

注意点はいろいろとあり、空腹時に内服しなければならないこと、併用禁忌の薬がいろいろあること、血糖値が上昇しやすいこと、肝機能が悪いと使用できないことなどなど使用に際しては注意が必要です。

1錠246円強なのですが、1日1錠の内服ですので、抗癌剤などと比べれば圧倒的に安価な薬と言えます。

エドルミズ錠はガンを治す薬ではありません。
しかし、悪液質の状態を改善したり進行速度を遅らせることでQOLの改善や生存期間の延長が期待されます。根治的治療ではなくともできれば使用したいものですね。

最初に書いたように、エドルミズ錠は世界で初めての悪液質治療薬なのですが…
エドルミズ(アナモレリン)と同じく、グレリンの分泌を促進して食欲を高めるという漢方薬がすでにはるか昔から存在しています。

それが「六君子湯(りっくんしとう)」という漢方薬です。

六君子湯は機能性ディスペプシアや慢性胃炎などの胃の不調による諸症状によく効くので広く使用されている漢方薬です。胃の不調があったら、とりあえず処方されることの多い漢方薬なのですが、六君子湯は以前からよく研究されており、グレリンの分泌促進、成長ホルモンの分泌促進作用があることが以前から知られていました。

つまり、六君子湯はがん悪液質の治療薬としてはるか昔の賢人たちによって意図せず開発されていた漢方薬なのです。
漢方薬なので、エキス剤の場合には1日に複数回内服しなければなりませんし、煎じ薬を作るのはとてもめんどくさいかもしれません。
しかしエドルミズ錠のように併用禁忌の薬があるわけでもなく、副作用も少なく、しかも特定のがんによる悪液質にしか使えないという制限もありません。

六君子湯は胃の動きを改善し、吐き気や胃の膨満感を解消し、食欲を高めるばかりでなく、元気を湧き起こす「補気剤」です。
漢方専門医として手前味噌なことを言ってしまうかもしれませんが、なぜ日本でがん悪液質の食欲不振に対してエドルミズ錠よりも前に六君子湯が広く活用されていなかったのか、不思議でなりません。

体力の消耗やエネルギーの枯渇を補う薬(補剤)は漢方にしかない、漢方の得意分野です。
がん治療にはもっと漢方薬が活用されてもよいのではないかと思う今日この頃です。


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