新前橋すこやか内科・漢方内科クリニック|内科・漢方内科、外科、補完・代替医療(自由診療)

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腹が立つ!頭に来る!ん?どっち?

「腹が立つ」「頭にくる」
どちらも怒りの状態を表現したものです。

しかし、「腹」と「頭」では向きがまったく逆のように思いませんか?
昔、何かの漢方に関する本で読んだ話をうろ覚えながらご紹介してみたいと思います。

怒りの原因となるようなストレスに出くわしたときに、人はいったん「肚(はら)に収め」ます。まるで食べ物を消化するかのごとく、ストレスもまた「かみ砕いたり」「飲み込んだり」するのです。うまく消化できればいいのでしょうけれど、どうしてもそのストレスを処理しきれなかったりすると「胃に穴があく」ような思いをして実際に胃潰瘍になったり、「腹に据えかねる」とか「はらわたが煮えくりかえる」という怒りの状態になります。

最近では腸脳相関という言葉があるくらい、意識や脳機能と腸の機能とが密接に関係していることに昔の人は体感的に気づいていたようです。

さて、次に「頭にくる」方ですが、こちらは腹ではなく頭の問題のようです。漢方医学的に「頭に来ている状態」は「気逆(きぎゃく)」ではないかと思います。「気」は本来体の中心を頭からお腹に、上から下へと降りていくものですが、それが上に逆行してしまう異常な状態です。

気逆の状態では、頭痛がしたり、顔が赤くなったり、顔に熱を持ったりします。
上述した通りストレスに出くわすと本来は「腹(肚)」で受け止めて処理をするのです。「腹に据えかねる」状態が限度を迎えてしまったりすると気逆が生じて「頭にくる」のだと思います。

腹に入ったストレスが消化不良になるとお腹が下るかもしれません。
実際、ストレスが原因で腹痛や下痢を生じることがあります。過敏性腸症候群はその一つの例ではないでしょうか。

近年では「腹」が弱い人が増えているようで、それがまさに「すぐ切れる」人が増えている背景と考えられます。

気逆は現代的な不摂生な生活で生じる病態であると説明されることがよくあります。
現代では硬くて繊維質の多い野菜を食べざるを得ないような機会は簡単に避けられるようになり、いつでも自分の食べたい柔らかくて気に入った味のファストフードなどを食べられるようになりました。
野菜を食べなくなった日本人の腸は短くなっているとも言われますし、ファストフードや出来合いのものばかり食べていては健康的な腸内フローラも形成されませんので、やはり胃腸は鍛えられないのでしょう。

むかしの人はその土地でとれた野菜や穀物が食事の中心でした。
今のような品種ではなく、固定種や在来種であるため線維も強いし甘味も控えめです。
そんな食事をしていたので、むかしの人はよく噛んで時間をかけてゆっくりと食事・消化をしていました。

(そうそう、むかしの焼き芋といまの焼き芋では、サツマイモの品種が異なるためだいぶ味も食感も変わりましたね。個人的には昔の焼き芋の方が美味しいと感じるし好きなのですが。。。)

そんなこんなで、現代人は肚がストレスを受け止めることができずにすぐに気逆が生じてしまい、すぐに頭に来てしまうようです。

胃腸機能が低下した高齢者がすぐにキレてしまうのも同じ理由かもしれません。

漢方では胃腸機能(脾)を非常に大切にします。
脾が健康であれば食事からしっかりと「気(き)」を生み出し、「血(けつ)」の材料となる栄養を吸収することができます。「脾(消化器)」こそ健康の第一歩なのです。


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