新前橋すこやか内科・漢方内科クリニック|内科・漢方内科、外科、補完・代替医療(自由診療)

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大建中湯はクローン病の腸閉塞に効く?

大建中湯(だいけんちゅうとう)という漢方薬は、ツムラの保険用製剤の中でもっとも出荷数が多い漢方薬だそうです。

大建中湯はお腹を温めることで腸管の蠕動運動を正常化させ、腹満感や下痢・便秘を治します。お腹が冷えている人向きの薬なのですが、お腹が冷えていれば下痢でも便秘でも効いてしまうのが面白いところです。

この大建中湯が効きやすい人は「腹筋が薄くて痩せており、腸管のムクムクとした蠕動が見える」と言います。どこの先生がそう思ったのかは存じ上げないのですが、腸閉塞(イレウス)になった患者さんのお腹を見て「これはまさに大建中湯が効く腹証とピッタリ一致している!」と思ったのでしょう、腸閉塞の人に大建中湯を飲んでもらったところよく効いたようです。

実際、臨床研究が実施されており、クローン病における腸閉塞に対する大建中湯の効果が調査されました。
この研究では、平均年齢33.4歳のクローン病の男性または女性を対象として、腸閉塞と診断された時点で大建中湯を投与し治療効果を確認したものです。大建中湯投与群では腸閉塞解除までの時間が有意に短縮したという結果が得られたため、腸閉塞に対して大建中湯が効くという認識が広まりました。なので漢方にあまり詳しくない外科や内科の先生でも、腸閉塞というと大建中湯を処方するようになりました。

ただ、大建中湯はお腹が冷えている人向きなので、お腹が冷えていないイレウスの人に使用してもあまり効果的ではないように思います。それにお腹が冷えていない人が大建中湯を飲むと、辛く感じて仕方ないかもしれません。腸閉塞=大建中湯という短絡的な認識に基づく使い方はやめておいた方がいいと思われます。

上述の臨床試験での注目点は、クローン病という炎症性腸疾患による腸閉塞であったという点です。
手術後の癒着ではなく炎症による癒着や狭窄に対して大建中湯が効果があった、ということは大建中湯に含まれる生薬には抗炎症作用があったりするのかもしれません。

そういうことを考えて薬理学的な研究が進んでいくと、もっと漢方薬の使い方が広がるかもしれませんね。

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