新前橋すこやか内科・漢方内科クリニック|内科・漢方内科、外科、補完・代替医療(自由診療)

新前橋すこやか内科・漢方内科クリニック

SLEの症状に五苓散

SLEは指定難病の一つであり、日本語名は「全身性エリテマトーデス」と言います。
英語ではsystemic lupus erythematosusであり、臨床では頭文字をとってSLEと略しています。SLEは特徴的な赤い発疹(紅斑)、発熱、全身倦怠感、関節炎、腎臓・肺・中枢神経などの内臓症状など全身のさまざまな臓器に多彩な症状を引き起こします。

原因は今のところ不明ですが自己免疫疾患の一種であり、全身に炎症が生じます。日本全国に約6~10万人程の患者さんがいると考えられています。有色人種に多い傾向ですが、日本では地域差はありません。男女比は1:9で圧倒的に女性に多い疾患です。月経中に症状が出現しやすいとされています。特に20-40歳代の女性に多いとされています。

紫外線、ウイルス感染、外傷、妊娠・出産、ある種の薬剤により悪化することが知られています。上述の通り、SLEでは自己免疫異常により全身的な炎症が起こり、これが内臓異常や血管障害が加わります。教科書的には、蝶形紅斑という特徴的な顔の発疹が有名なのですが、症状の軽重はひとそれぞれです。ループス腎炎、神経精神症状、心病変、肺病変、消化器病変、血液異常などは生命に関わる重要な障害になることがあります。

治療は主に副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤が使用されます。その他にも生物学的製剤なども近年では利用されています。SLEでは体中に血栓を作りやすい抗リン脂質抗体症候群を合併する場合があり、その場合にはアスピリンやワルファリンなどの抗凝固剤や抗血小板剤で血栓の予防治療をおこないます。

さて、SLEの諸症状に対して漢方薬も昔からよく利用されてきました。今回は当院で治療をされたある女性の症例をご紹介いたします。
その40代の女性はステロイドを少量使用しておりSLEはおおむねコントロールできている状態でした。しかし、顔を中心とした全身のむくみを密かに気にされておりました。

実はこの患者さんは、SLEの治療ではなく、胃の不調を訴えて受診された際に、SLEのせいで浮腫みが強いということも教えていただきました。そこで使用したのが胃苓湯(いれいとう)という漢方薬です。

胃苓湯は平胃散という漢方薬と五苓散という漢方薬が合体したものです。平胃散は胃の不調による消化不良症状などに効能があります。五苓散は体内の水の偏りを是正する漢方薬であり、とても応用性の高い漢方薬です。

さて、今回の患者さんは胃苓湯を内服することで胃腸の調子が改善するとともにSLEによる浮腫みも解消しました。そしてしばらくして内服を終了され、通院することもなくなったのですが…しばらくしてから別の症状で受診されました。

今回の症状は、SLEによる浮腫みの再燃と、小柴胡湯という漢方薬を使用すべき諸症状でしたので、小柴胡湯と五苓散が合体した柴苓湯(さいれいとう)という漢方薬を使用しました(小柴胡湯についてはまた別の機会に解説します)。柴苓湯は膠原病や自己免疫性疾患、よくわからない難病などで利用されることの多い漢方薬という個人的な印象があります。小柴胡湯という漢方薬を使用しているのですが、小柴胡湯はステロイドの減薬サポート治療の中心的な漢方薬です。

さて、そんな柴苓湯を使用することで、今回も浮腫みはスッキリ解消し、諸症状もすっかり良くなっていきました。
今回の患者さんの例ではSLEによる浮腫という症状に対して五苓散という漢方薬がよく効きました。しかし、最初に使用した胃苓湯のように、患者さんのもともとの体質の弱点をケアする治療を組み合わせたこともSLEの症状を軽快させた一因だという手ごたえがあります。

標準的医学ではどうしても対症療法中心になってしまいます。しかし、漢方治療による体質改善によってSLEのような難病でも症状を軽減させることができます。難病に対する標準治療に行き詰った方は、漢方薬もお試しになってみてはいかがでしょうか?


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