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コロナにも漢方は有効!?

2021/10/13
 「漢方と免疫力」をテーマにした記事を以前に書きました。 
👉こちら
 

感染症の予防に漢方薬は本当に役立つのでしょうか?
近年の大規模な感染症に対する中国における漢方薬(中医薬)の使われ方を振り返ってみたいと思います。

2002年から2004年頃に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)は、感染者数8000人、死亡率10%という危険な感染症でした。SARSもコロナウイルスの一種が原因でしたが、この時には「板藍根(ばんらんこん)」や「玉屛風散(ぎょくへいふうさん)」という薬が有効であるとして活躍しました。

実は板藍根は群馬県の某企業さんがアメとして販売してくれています。今回の新型コロナの予防にも有効と言われているそうです。利害関係にあるわけではありませんのでこれ以上詳しくは書きませんが、調べれば全国各地のメーカーさんが入手しやすい形で板藍根を売ってくれているかもしれませんね! 
玉屛風散はシンプルな漢方薬なので、既存のエキス剤でも似たようなものを作ることができます。

2012年から2013年頃に流行したMERS(中東呼吸器症候群)では患者数こそ2500人ですが死亡率は約37%という恐ろしい感染症でしたが、中東が感染の中心地だったため日本ではあまり流行することがありませんでした。こちらもコロナウイルスでした。この時には「銀翹散(ぎんぎょうさん)」や「麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)」という漢方薬が活躍しました。
 
銀翹散は市販薬としてドラッグストアなどでも売っています。個人的に愛用している薬です。
また、麻杏甘石湯は保険診療で使えるエキス製剤にもありますので、入手しやすい漢方薬です。 

そして今回の新型コロナウイルスの診療に際して、中国の漢方医(正式には中医師)も4900人動員されましたが、誰一人新型コロナに感染しなかったそうです。
真偽のほどはわかりませんが、皆独自に自分に合う漢方薬(中医薬)を飲みながら診療していたと言われています。

新型コロナに有効であると言われた中医薬の代表は「清肺排毒湯(せいはいはいどくとう)」です。
これは日本の漢方薬にはありませんが、複数の漢方薬を組み合わせることで同じようなものを作り上げることができます。
レシピさえわかればこうして複数の漢方薬を組み合わせることで同じようなものが作れる。こういう所が漢方薬の良いところではないでしょうか?

では漢方薬によって感染症の予防ができるのでしょうか?
以前の記事では「補剤(ほざい)」という、身体機能を底上げするようなタイプの漢方薬をご紹介しました。補剤にはマクロファージの活性化やNK(ナチュラルキラー)細胞の活性化などの免疫増強作用が報告されています。
マクロファージやNK細胞は、ウイルスや細菌などの病原性微生物が人体に侵入した際に、まず突撃して攻撃してくれる細胞たちです。このような免疫のことを「自然免疫」と言います。生来備わっている免疫という意味合いです。
一方、自然免疫の結果やワクチンで抗体を作って外敵と戦おうとする免疫のことを「獲得免疫」と言います。生まれた後に獲得する能力という意味合いですね。 

漢方に使用される生薬には、これら自然免疫を高めたり、獲得免疫を高めたり…と、感染症の予防と治療に有効なものがたくさんあります。補剤以外にも、身体のバリア機能を高めることで感染症に対する抵抗力を高めてくれる漢方薬もあります。

新型コロナ感染症の予防というと、ワクチンにばかり注目が集まっているように思いますが、今回見てきたように漢方薬(中医薬)は治療にも予防にも十分に効果が期待できます。
「日本の漢方は中国の二番煎じである」などと言われないように、我々も頑張らないといけませんね。 


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手汗、わき汗、顔の汗···出すぎて困る全身の汗

2020/12/17
今回は「発汗のお悩み」についてです。

汗が出ることは体温調節や老廃物排泄などの意味のある正常な機能です。
しかし、あまりにも汗が出すぎてしまうと、社会生活に支障を来してしまう場合があります。特に若い女性にとっては大いに気になる悩みではないでしょうか?

汗の出る部位(手やわきや顔)にもよりますが、異常発汗の原因には重病が隠れている場合もあります。まずは西洋医学的にきちんと精査を受けることをお奨めしますが、特定の原因疾患がない場合、いざ治療となると西洋医学では事実上ほとんど打つ手がありません。 

ということで漢方でも発汗異常の治療をすることがあります。
漢方が有効な発汗異常は、漢方でいう「水毒」「気逆」「うつ熱」などの病態であることが多いようです。

水毒(すいどく)」は体内の水分分布異常や水余りの状態です。
この状態の代表的な治療薬が「五苓散(ごれいさん)」です。この五苓散は本当に不思議な効き方をするというか、想定外の治療効果を発揮することがあります。発汗異常に対しても五苓散が著効する場合があります。

また、ぶよぶよと水太りする体質の方で顔中心に発汗が多い方には「防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)」を使用します。ダイエット薬としても、あるいは「膝に水が溜まっていたい」という場合にも使用されます。

「手汗」や「わき汗」の多くはストレスに関連していることが多いようです。
もともと緊張しやすい方で、緊張により手のひらや足の裏などに汗が出てくる、しかも手や足は冷える…という方の場合には「四逆散(しぎゃくさん)」という漢方薬の出番です。実際、「デートの時に手に汗をかいてしまうのが恥ずかしくて手をつなげない」という若い女性にとっては深刻なお悩みを抱えているものの、なかなか人には相談できずに一人で困っている方は案外多くいらっしゃいます。そんな方にはうってつけかもしれません。

手のひらや足の裏に汗をかきやすい体質で、慢性的な炎症を背景とした副鼻腔炎や中耳炎、湿疹や皮膚疾患がある人の体質治療として「荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)」という漢方薬もあります。今からちょうど100年くらい前の時代の森道伯(もりどうはく)という日本の漢方医が古来から伝わる処方をアレンジして活用したものです。

腋汗の場合にもストレスが関与していればストレス関連の漢方薬を、水のめぐりの問題であれば五苓散のような漢方を処方して治療します。
首から上の汗が多い方もしばしばいらっしゃいます。特に西洋医学的に「自律神経失調症」と診断されて、有効な治療方法がない場合があります。
そのような場合に使用される漢方薬に「柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)」という漢方薬があります。どちらかと言えば冷え症や貧血、神経過敏などのある、弱っている方向けの処方です。

また、更年期症状のホットフラッシュによる発汗の場合には更年期対策の漢方薬を使用して治療にあたります。「加味逍遙散(かみしょうようさん)」という漢方薬が有名で、市販薬にも含まれています。

夜、寝ているときに寝汗を大量にかく場合には注意が必要です。
漢方的には体の表面の機能が弱っていて衰弱してきている症状の可能性があります。そのような場合の代表的な治療薬は「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」です。

一口に発汗異常と言っても、漢方的な病態は患者さんお一人お一人千差万別です。治療に苦労することも多々ありますが、発汗異常は漢方的にはとても勉強になる症状です。

実は最近、わき汗の治療薬「エクロックゲル®」という塗り薬が保険診療でも使えるようになりました!
発汗治療薬はこれからもっと開発されていきそうですね。 

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頭痛の治療をしたら寒冷ジンマシンが治まった!?

2020/12/8
今回は漢方の奥深さを感じたケースをご紹介いたします。
寒冷ジンマシンの女性のお話です。
 

ジンマシン(蕁麻疹)は原因がはっきりしないことも多い慢性的で不快な皮膚症状です。
原因がわかっていれば、その原因を避けることが重要ですが、寒冷ジンマシンのように日本で暮らしている以上、避けようと思っても避けることのできない原因もあります。 

当院にいらっしゃったある女性は、お話をうかがうと「夏以外はジンマシンが出る」とのことで大変つらい思いをされておりました。
さらにお話をうかがうと、胃が弱くて胃潰瘍治療薬(プロトンポンプ阻害薬:PPI)を長年に渡って内服されており、上部消化管内視鏡検査では十二指腸潰瘍を指摘されたことがあるものの、ピロリ菌はおらず、ストレスが原因と言われたとのことでした。
また、生理に関連して頭痛がひどく、吐き気を伴うとのことでした。

さて、この方に対してはジンマシン用にまずは外用剤を処方しました。
そしてジンマシンを直接治療するというよりも冷え症、胃が弱い、吐き気が生じるくらいひどい頭痛に注目して体質的な治療として「呉茱萸湯(ごしゅゆとう)」を処方いたしました。 

2週間後に来院されたときには「漢方が効いた!」とのことで頭痛の軽減とともにジンマシンも生じていないとのことでした。この冬の間は内服を続けていただくことになるかと思います。 
「呉茱萸湯」は以前の「頭痛には胃薬を」シリーズでもご紹介しました。(こちらもご参照ください) 
https://shinmaebashi-sukoyaka.com/blog/42.html 
https://shinmaebashi-sukoyaka.com/blog/44.html 
https://shinmaebashi-sukoyaka.com/blog/49.html
 

呉茱萸湯は、胃腸が弱っていて食餌から十分なエネルギー生産ができず、元気がめぐらないため頭痛が生じる場合に有効な漢方薬でした。
今回の経験からわかることは、寒冷ジンマシンもこのような頭痛と同じ「根っこ」を持つ場合がある、ということです。そしてそのような場合には、皮膚の症状にばかり注目するのではなく、そのような症状が出現している根本的な問題に意識を向けることが大切なのではないでしょうか。 

慢性的なジンマシンの治療に手こずることには西洋医学的に何度も経験していたので、たった2週間で効果が出てしまったことには我ながら驚いてしまいました。

ちなみにジンマシンをはじめとした皮膚疾患の「かゆみ」に対して、まずは対症療法的にかゆみを軽減して楽にしようと狙う漢方薬が「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」という漢方薬です。
「解毒湯」との名前がついているので、なんとなく効きそうな気がしないでしょうか?
そして2000年くらい前の時代にはすでに「デトックス」の概念があったんだな、と驚かせるネーミングでもあります。

皮膚疾患の治療ではステロイドの長期使用による副作用や有害事象で大変な思いをされる患者様がいらっしゃいます。
西洋医学的治療で効果が頭打ちになったら、漢方薬で体質治療というアプローチをしてみてはいかがでしょうか?


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漢方でダイエットできる!?

2020/12/4
しばしばお問い合わせがあるのですが 

「漢方薬でダイエットできるのか?」

とのご質問をいただきます。
結論から言いますと、漢方薬で10kgも20kgも体重が減って
BMI(ボディマスインデックス)
が20くらいのスリムな身体になることは不可能だと思ってください。

注)BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)(単位はkg/㎡となります)
 

体が痩せていくということは、ため込まれた脂肪や糖が分解、消費されている状況です。
何日も食事にありつけなければ徐々に痩せていくことはイメージしやすいかと思います。あるいは激しい肉体労働や運動のため、エネルギー消費がとても増えているような状況もわかりやすいかと思います。

一般的に、人間の身体は飢餓にそなえて栄養分をため込んでおくようにできていると言います。つまり痩せるよりも太りやすいということです。
逆に、痩せていく状況は身体にとっては好ましくないことが多いのです。
人類数万年の歴史のなかで、いつでもどこでも食べたいものが手に入る時代や社会はほとんどありませんでした。
その時、その場所で得られるものを食べるしかなかったのです。飢餓ととなり合わせの歴史だったということです。

漢方薬は、人間の自然治癒力あるいは「ちょうどよい健康状態へとバランスを保とうとする能力(ホメオスタシスと言います)」を利用しています。
血糖値を下げるホルモンが「インスリン」の一種類しかなく、一方で血糖値を上げるホルモンが複数あることからもわかるように、人間の身体は飢餓に対して強く、生き延びられるような仕組みができています。

したがって薬を使って「無理やりやせていく」という異常(病的)な状況においては、健全な身体であればブレーキをかけるでしょうし、漢方薬もそのような状況をわざと誘発させるようなものは、少なくともわれわれが診療で使用できる範囲には存在していません。

ただし、漢方薬によって体内に蓄積した老廃物の排泄が進んだり、内臓機能が改善して身体を健康な状態へと戻そうとする力が強くなった場合には数kgの体重減少とともに血中コレステロール値が改善したり、高血圧が改善したり、便秘が改善したり、肌荒れがよくなったり…というダイエット+αの効果を発揮する場合があります。

そのような漢方薬の代表が「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」です。
市販薬としてたくさん売られているのでご存知のかたも多いと思いますし、すでに飲んでみたかたも多いのではないでしょうか?
防風通聖散という漢方薬は「メタボな人向けの下剤」と考えるとイメージしやすいと思います。典型的には、汗をかきながら大盛ラーメンを食べている脂ぎった中年男性です。そのような人は、太鼓腹でお腹がパンパン、赤ら顔でいつも汗をかいており、高血圧で肩こりがあって便秘症…どうでしょうか?身近なお知り合いをイメージされたでしょうか?

このような人の便通がよくなることで体重が数kg減ったり、血圧が正常化したり、コレステロール値が改善したり…ということが起こります。排便というのは重要な解毒反応であるという証拠ですね。そのような体質改善目的に処方されるのが防風通聖散です。

ですから、防風通聖散が合わない方がこの漢方薬を内服すると減量効果がないばかりかお腹が痛くなって下痢をします。

上記のイメージに合わない方で防風通聖散の内服をご希望される場合には、必ず漢方診療ができる医師にご相談ください。 


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カゼをひいたら喉にネギを巻きましょう【おばあちゃんの知恵袋】

2020/12/1
カゼをひいたときには、焼いたネギをタオルで包み、のどに巻いてゆっくり休みましょう。

これはいわゆる「おばあちゃんの知恵袋」と言われるもので、生活の中から得られた成功経験や工夫のひとつです。
昔は24時間営業のコンビニもありませんし、夜間や休日においそれと病院に行くこともできませんでした。農村部などでは、身近にあるもの、手に入れられるものでどうやって健康を維持していくか、病気と向き合っていくかの知恵と工夫が大切でした。

かつての日本社会では、女性(母親)が家庭の運営を取り仕切っていましたので、日常生活で生じるさまざまな経験、トラブルシューティングの集積として「おばあちゃんの知恵袋」が生まれるのです。
「お母さん」が「おばあちゃん」になるころには日常生活のトラブルは「おばあちゃんに聞けばなんとかなる!」ということになっていたのです。

「おじいちゃんの知恵袋」は聞いたことがありませんので、父親(男性)はせっせと肉体労働をして、年をとったら女性よりも先にお迎えが来ていたことの反映でしょうか?

残念ながら、核家族化が進んだりコンビニや薬局も24時間営業になったりしたので、おばあちゃんの知恵袋は失われていったように思います。
近年みかけるさまざまな「生活のアイディア」などの多くは、かつてはおばあちゃんの知恵袋に入っていた生活常識の一つだったように思います。
こういった家庭レベルの文化や習慣が徐々に失われてしまっていることは大きなマイナスではないでしょうか?
今は何か調べものがあればスマホで検索すればそれで済んでしまいます。しかしその一方で無機質で人間味のない社会に向かっているような印象も受けます。

さて、ネギには抗菌成分や抗炎症成分が含まれているので、ネギを焼いて揮発する有効成分を吸引することで鼻、のど、上気道のカゼや炎症を鎮めることに役立ちます。もちろん、これは対症療法的な対応ではありますが、ネギには体を温める効果もありますし、ちょっとしたカゼくらいなら後はゆっくり寝ていれば人間の自力で治すことができました。

ネギを使った漢方薬というものも実はあります。
白通湯(はくつうとう)」というものです。これは保険製剤の「四逆散(しぎゃくさん)」の中の「甘草(かんぞう)」という生薬を「葱白(がいはく)」という生薬に替えたものです。葱白は新鮮なネギの根部に近い白い茎の部分です。辛味があって体を温め、内外・上下の気の流れを改善します。
白通湯は脾(消化器)と腎の気を助けるとともに、葱白で心脾腎の気を交通させることで強い虚寒性の下痢を治療します。冷えることで生じる下痢というものがあるのですね。

冷えによって生じる下痢の治療には、このほかにも「真武湯(しんぶとう)」や「啓脾湯(けいひとう)」などの漢方薬も使います。
意外と知らない方が多いのですが、エキス剤の100番としておなじみの「大建中湯(だいけんちゅうとう)」も腸の冷えによる下痢に使用します。

「大建中湯=手術後腸閉塞」のようなイメージが広まっていますが、本来は大腸が冷えて痙攣性の蠕動不良を生じたために痛みと下痢や便秘などの便通障害が生じているときの治療薬です。
漢方の本には「お腹を見ていると腸がムクムク動いているのが見える。まるでタコの足のようだ。」なんて面白い記述がありますが、時代を超えてとてもよくわかる優れた表現ではないでしょうか。

カゼの話をしていたのに下痢の話になってしまいました。
「カゼは万病のもと」と言います。お気を付けください。


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