新前橋すこやか内科・漢方内科クリニック|内科・漢方内科、外科、補完・代替医療(自由診療)

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健康のこと、日常のことなどを発信しています。

「眠くならない」のが花粉症治療の主流になってきました

2021/1/28
今年も花粉が飛びはじめるようになりました。
外出自粛ムードとはいえ、換気のために窓を開けることもあるため花粉症の症状があらわれ始めた方もいらっしゃるようです。

花粉症の薬といえば「眠くなる!」というのが当初の悩みのタネでした。
しかし、製薬メーカーさんの努力により「眠くなりにくい!」薬が開発されるようになり…
今では主要な薬は「眠くなりにくい」という点ではほぼ横並びとなっています。そのなかでも「クラリチン」「デザレックス」「ビラノア」といった、薬剤情報提供書に「自動車運転の注意記載がない」ものは頭ひとつ抜けている印象ではあります。眠気に関しても、花粉症に対する効果に関してもそれほど極端な差はなくなってきています。

かつて、眠くならない花粉症治療といえば漢方薬でした。
花粉症漢方として有名なものは「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」です。こちらはくしゃみ、鼻水が主症状の花粉症に用います。小青竜湯が合うのはもともと水っぽい体質の人です。
一方で目のかゆみが強いかたには「越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)」を使用します。目のまわりなどに熱がこもるタイプに合うお薬です。

小青竜湯も越婢加朮湯も「麻黄(まおう)」という生薬を含んでいます。解熱・利尿・発汗作用がある生薬なのですが、エフェドリンという成分が含まれています。エフェドリンが含まれているおかげで眠くならない花粉症治療薬となるのですが、使用を控えたほうがいい場合もあります。

心臓系の病気があるひと、不眠症のひと、胃がよわいひと、プロスポーツ選手などです。エフェドリンによって心疾患が悪化したり、交感神経のスイッチが入ってドキドキして眠れなかったり、胃の調子が悪くなったり、ドーピングでひっかかったりします。

小青竜湯も越婢加朮湯も漢方でいう実証(じつしょう)の人向けの薬です。要するに体力が十分にある人に向いている薬です。エフェドリンによってエンジンをかけるというか、馬力を引き出すような方向に作用するのでもともと虚弱な人には向いていない漢方薬なのです。

では虚弱なひとはどうするかというと、「苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)」という漢方薬を使用します。
これは「小青竜湯の裏処方」と言われる漢方薬で、水っぽい虚弱な体質で、小青竜湯を飲むと体調が悪くなる(なりそう)な人向きの薬です。

小青竜湯のエキス剤番号が19番で、苓甘姜味辛夏仁湯の番号は119番という具合に、製薬会社さんの遊び心が伺えます。

漢方治療で花粉症が治ってしまうこともあるかもしれませんが、花粉症は免疫システムの過敏症ともとらえることができます。過敏となった免疫システムを正常に戻すためには生活習慣(とくに食生活)の改善に取り組んでいただくことがとても重要です。


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ウサギのようなコロコロ便、便秘症、手や足のほてり、乾燥肌

2021/9/8
便秘は健康にとって重大な悪影響をもたらします。

「便秘」と一口に言っても、何日間も排便がないのも便秘ですし、毎日排便はあっても「スッキリしない」「出きっていない」感じがあるのも便秘です。 
大腸に便が長時間停滞していると、いわゆる悪玉菌の活動が優位になっていってしまいます。その結果、おなかが張るとかオナラがたくさん出るというような症状にとどまらず、動脈硬化や糖尿病、肩こりや腰痛など全身的なさまざまな症状の要因となるのです。
もちろん、お肌の状態と便通に関連があることは美容業界では以前から知られていることですよね。

便秘の解消は健康づくりの土台としてとても重要なことなのですが、あれこれ薬を使ってみても良くならなかった…という方も多いのではないでしょうか?
私も外科医ですので便秘に悩まれている患者さんとはたいへん多く接してきました。そして西洋薬をあれこれ使っても効果がなく改善できなかった経験がたくさんあります。
そんなときに漢方の便秘薬で劇的に便秘が改善する経験がなんどか続いたことから漢方薬に興味をもつようになりました。

便秘の原因は人それぞれですが、基本的には運動不足や食物繊維の不足などの生活習慣がとても重要です。
冷え症というのも、腸の動きが悪くなるので問題です。お年寄りの場合には全身的な筋肉のおとろえや運動不足、そして体の水分の減少のためますます便秘が悪化してしまいやすくなります。

便秘症の方で、ウサギやヤギやヒツジのような(奈良のシカのような?)コロコロした便が出る場合には便が大腸内に滞在している時間が長く、しかも腸に潤いがないために便が乾燥してしまっている可能性があります。

漢方的には「血虚(けっきょ)」の便秘と考えられるものです。
どちらかと言えばご高齢の方や女性に多い印象です。血虚が肉体的な消耗や不足のことですから当然と言えば当然かもしれません。見分けるポイントとしてわかりやすいのは「肌がカサカサである」というものです。

そんな血虚によるコロコロ便タイプの便秘症には「潤腸湯(じゅんちょうとう)」という漢方薬が本命の薬となります。

「腸に潤いを与える」というわかりやすいネーミングではないでしょうか? 

この主要な効果を発揮している生薬が「麻子仁(ましにん)」という麻のタネです。七味唐辛子なんかにも入っています。
実は「麻子仁丸(ましにんがん)」という便秘薬もあって、こちらも麻子仁を中心とした漢方薬なのですが、潤腸湯のほうがさらに乾燥や衰えが進んでいる人向きの漢方薬です。 
西洋薬にはこのような角度から便秘にアプローチするものがないため、西洋薬で改善しない便秘症のかたでも希望を捨ててはいけません。
また、便通が良くなることで、血糖値が安定したり体重が数kg減ったりというオマケの効果が得られることもあります。

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腸内フローラ(腸内細菌叢)をご存知ですか?

2021/1/23
近年、体の表面や体内に生息している細菌たち(常在菌)が人間の健康に大きな影響を与えていることがわかりつつあります。 
人間のからだは、小さな小さな細胞たちが役割分担と協力をすることでひとつの大きな「人間」という存在を作り上げることで成り立っています。その数は30兆とも60兆とも言われていますが、腸内細菌の数はその10倍(400兆!)以上と言われています。

高度に複雑な人体を作っている人間の細胞の「遺伝子」の数は「2万数千個」であることが判明しています。
この「2万数千」という数は多いと思われるでしょうか?
驚くべきことに、そのあたりに生えている雑草やネズミなどの小動物とほとんど同じか場合によっては少ない数なのです。

人間は、決して多いとは言い切れない数の「遺伝子」とその産物である「タンパク質」をうまく活用することで非常に高度な生命現象をコントロールしているのですが、人間は腸内細菌のはたらきも自分の生命現象のために活用していることがわかってきました。

腸内細菌が産生するビタミンというものもありますし、人間には消化が難しい食べ物を腸内細菌によって処理してもらう、ということもあります。 
ほかの見かたをすれば人間の10倍も多く存在する腸内細菌のもつ「遺伝子」も利用していると考えることもできます。外部発注と表現するとわかりやすいでしょうか?
腸内細菌にとっては、自分たちの生存に必要なエサを人間が供給してくれて、しかも比較的安定した住居(腸内)を提供してくれているのでギブアンドテイクとも言えますね。 

さて、そんな腸内細菌のことを「草むら」とか「お花畑」という意味合いを込めて「フローラ(叢)」と呼ばれています。
この発想はおそらく実験室で各種の腸内細菌を分離・培養しているシャーレ(小皿)にできた細菌によるコロニー(集合体)がまるで色とりどりの花畑のように見えることに由来しているのではないかと個人的には思っています。

そして「腸内フローラ」と人間の健康とのあいだに非常に深い関係があることが近年の研究で徐々にわかってきており、さまざまな分野で研究が進んでいます。
がん、糖尿病、脂肪肝、炎症性腸疾患さらには自閉症や発達障害などなど、研究はまだはじまったばかりではありますが腸内細菌との関連は明らかになってきているのです。

腸内細菌叢は生まれたときに母親からもらうものや生育環境の中で少しずつその人なりのバランスが形成されていきます。
ご存知のとおり食生活がもっとも重要ですが、いろいろな細菌とふれあって育つことも重要です。
そのため、腸内細菌叢を鍛えるのであれば、子供には野山を走り回らせておくのが良い方法であると言えるでしょう。
これはあながちバカにできない話で、製薬会社が新しい抗生物質を開発するために人間があまり立ち入っていない山奥の土を持って帰って研究したりしているのですから、自然に触れて育つことは腸内フローラだけでなく肌に住んでいる常在菌叢の発達にもとても有効だと思われます。

いろいろな細菌が体内に入ってきて、そこで腸内細菌たちと熾烈な生存競争が繰り広げられていくなかでその人の腸内フローラが形成されていくのです。
そのため、最近の風潮のようにやたらめったらなんでも除菌してしまうのは考えものです。

生活空間の除菌商品にはどれも「99%除菌」と書いてあります。
なぜ「100%」ではないのでしょうか?
それは、100%除菌するような危険な薬剤は生活空間では使いにくいからです。そして大きな問題があります。
99%の菌が除菌されたら、残った1%の菌はどうなるでしょうか?

当然、繁殖します。そしてその1%の菌には通常の除菌商品は効かないので、やればやるほど増え続けることになります。
この1%の菌が実は危険な病原性をもつ細菌の仲間であることはあまり知られていません。
そう考えると「なにごともバランス」という自然界の法則に逆らってはいけないのだとわかりますね。

さて、腸内細菌叢の健康状態をしることができる検査が「腸内フローラ検査」です。
ご自分の腸内細菌の種類、バランスを知ることができ、健康に有利な腸内細菌叢をつくりあげるための食事のアドバイスもわかります。
検査のさいには、当院から検査キットをお渡しいたします。
大腸がん検診の検便と同じように「ご自宅で」「ご自身で」便の採取をしていただき、検査機関へ郵送していただきます。1ヵ月ほど後に検査結果が郵送で送られてきます。 
今はまだ自費診療の検査ですが、いつか保険診療になってくれるといいですね!

腸内フローラを短期間で劇的に変化させる方法は今のところありません。
日々の食生活やプレバイオティクス、プロバイオティクスなどの方法で6か月~1年かけて少しずつ変化させていくことになります。
便秘や下痢、お腹が張る、オナラが多いなどの消化器症状がある場合には整腸剤なども利用できると思います。
当院では自由診療外来において食事療法・食事指導もおこなっておりますので、ぜひ併せてご活用ください。


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更年期の治療とむずむず脚症候群の話

2021/1/21
むずむず脚症候群は、じっとしたときや横になった際に下肢を中心にさまざまな不快な症状が生じる原因不明の疾病です。
英語ではrestless syndrome(休みのない脚、絶え間ない脚)というわかりやすい名前がついています。
名前の通り「むずむず」するほかに「チクチク」した痛みや火照る感じ、虫が這うような不快感などなど症状の表現は多彩ですが、共通することはとにかく不快な症状が続いて止めることができないということです。また、そのせいで不眠症になってしまうこともあります。

現時点で明確な原因がわかっておらず、発症のきっかけも人それぞれです。
治療方法として確立されたものはありませんが、脳内の神経伝達物質を調整する薬の効果が確認されています。しかし、こういった薬はパーキンソン症候群やてんかんなどに使用される薬であり、副作用もあるため管理の難しさが難点です。

漢方で治療する場合には病名や診断に囚われずに、患者さんお一人お一人の諸症状と診察所見(これらをまとめて「証(しょう)」と言います)に基づいて治療薬を決めます。
私の過去の治療経験をレポートいたします。
ある女性がホットフラッシュ(急に生じるのぼせ)と疲れやすさなどの更年期症状で受診されました。数年前から体のあちこちが筋肉痛のように痛くなり、精査したものの原因を特定できなかったとのことです。

漢方的な診察をいたしまして、もともとの体質として血虚と水滞(肉体的な消耗や不足と水分分布のかたより)があり、更年期のため瘀血(微小な血行循環のわるさ)があると考えました。
市販薬のような構成になってしまいましたが「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」と「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」という漢方薬を併用して治療を開始いたしました。当初は「むずむず脚症候群の治療は更年期症状がコントロールできるようになったら考えよう」と思っていました。

2週間後に再診でいらっしゃったときには更年期症状に若干の改善が認められました。それとともに「この2週間、むずむず脚症候群の症状は起きていない」とお話されておりました。

これだけでは半信半疑だったのですが、さらに1ヵ月後に来院された際には脚がつることもなく、むずむず脚症候群の症状を感じることもなくなったとのことでした。更年期症状についても、冷えを感じることもなくなり、ホットフラッシュも軽減され、発汗やのぼせにより生活に支障がでることもなくなっていました。

もともとの体質や更年期症状の治療だけに集中していたのですが、むずむず脚症候群についても治療開始当初から改善を認めました。
これは予想外のことでしたのでとても驚きました。血虚や瘀血は肉体的な物質の不足や、微小な血行循環の問題であると考えらえています。今回ご紹介したケースの場合では当帰芍薬散と桂枝茯苓丸のどちらがむずむず脚症候群に対して効果があったのかはわかりません。もしかしたら両方でうまく働いてくれて効果が出たのかもしれません。

考察すべき点は、むずむず脚症候群が漢方でいうところの「血(けつ)」の関与している病態の可能性がある(そういうむずむず脚症候群がある)ということだろうと思います。
血虚(けっきょの関与が強ければ「こむら返りしやすい」とか乾燥肌、爪がわれやすい、目の疲れ、顔色などの血色がわるい、不安感、髪が抜けやすいなどの症状がポイントです。
瘀血(おけつであればクマができやすい、シミが多い、肩こり、舌の裏の静脈が怒張している、クモの巣のような血管拡張がある、痔などの症状がポイントです。  
また、水滞(すいたい)の場合には浮腫みやすい、低気圧がくると体調が崩れる、手足が常に湿っている、舌が全体的に白っぽくて腫れぼったいなどの症状がポイントです。

こういうところから病態の解明ができるととても面白いですね。

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五十肩、頚肩腕症候群、上腕神経痛、肩や首のこり・痛み、腕の痛みに思わぬ効果を発揮する二朮湯

2021/1/12
肩こりや首の痛み、五十肩で腕が上がらない…などの症状もまた西洋医学的な治療が効果を発揮しにくい症状ではないでしょうか。
最近ではパソコンを使った仕事や長時間のスマートフォン操作が原因の肩こりも増えているようです。

多くの場合には整体やマッサージに通ったり、毎日シップを貼りつづけたり、鍼灸院で治療を受けているかたもいらっしゃるかもしれませんね。
肩こりや五十肩などの症状に使用する漢方薬の代表は「葛根湯(かっこんとう)」です。葛根湯というと風邪薬のイメージが定着しているため、意外に思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、葛根湯には僧帽筋(首すじから背中にかけての大きい筋肉)の血行を良くして温め、水の巡りを改善する効果がありますので、肩こりや首こりにも効果があります。
風邪薬やインフルエンザの治療として使う場合にも、首すじがこっている感じというのが処方のポイントになります。また、かつては髄膜炎の治療にも使用されたようです。

肩こりを通り過ぎて五十肩にまでなると葛根湯に独活(どっかつ)という生薬を加えた「独活葛根湯(どっかつかっこんとう)」という漢方薬の方が効果はありますが、こちらは保険診療で処方できるエキス剤はありませんので、OTC(ドラッグストアで売っているエキス剤)や煎じ薬で対応するしかありません。
ちなみに独活とは「ウド」のことですので、日常の食生活に取りいれることができるかもしれませんね。 

五十肩(四十肩)は英語でfrozen shoulderと表現されます。
肩が凍りついたかのようにカチコチになってしまったという表現は直感的でわかりやすい表現ではないでしょうか?
肩こりに対して効果がある漢方薬は他にもたくさんあるのですが「それなりに効いたけどスッキリ良くならない」という経験もしばしばあります。「仕方ないのかしらね」と言われてしまうのは情けないというか申し訳ないなと思ってしまうのですけれども、あれこれ使ってみてどうもしっくり来ないときに思わぬ効果を発揮してくれるのが「二朮湯(にじゅつとう)」という漢方薬です。 

この漢方薬は12種類の生薬から構成されている複雑な漢方薬なのですが、狙いとしては「体に溜まってこびりついた水を取り除く」という目的をもって作られています。しかも上半身の水分がターゲットとなっています。どちらかと言えば胃腸が弱く、筋肉にも締まりがない人のほうが適しています。

私自身いままで二朮湯を処方することは少なかったのですが、当院に通院されているある60代の女性の肩こりに処方してみたところとても効いたため私の中での評価が一気に高くなりました。実はその方はもうすでに他院の漢方治療で複数の漢方薬を処方済みだったため(あまり効果がなかった)、消去法で残っていた選択肢のなかから選んだのでしたが、思わぬ効果を見せてくれました。

肩こりや五十肩、それに頚肩腕症候群や上腕神経痛などは骨格的な問題や筋肉の問題、血行や水分代謝、神経的な問題などさまざまな要因が複雑にからんでいる状況です。
12種類もの生薬から作られている二朮湯が処方として確立するまでには、多くの漢方医が試行錯誤をつづけて全体のバランスをうまく改善するように努力してきたことがうかがえます。


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