「痩せたいけれど、なかなか体重が減らない」「健康診断で毎年『体重を減らしましょう』と言われる」「血圧も血糖値も少しずつ高くなってきた」そんなお悩みはありませんか?「ダイエット」というと、どうしても「見た目を良くする」「細くなる」というイメージがあります。しかし医学的には、肥満治療の目的は単に体重計の数字を減らすことではありません。今回は「肥満を治療する本当の意味」について考えてみましょう。■問題なのは「体重」だけではありません肥満、とくに内臓脂肪が増えると、身体の中ではさまざまな変化が起こります。たとえば、✓ 血圧が高くなる✓ 血糖値が高くなる✓ 中性脂肪が増える✓ 脂肪肝になる✓ 睡眠時無呼吸を起こしやすくなる✓ 膝や腰への負担が増えるなどです。つまり肥満治療で本当に考えたいのは「何kgになりたいですか?」だけではなく「余分な脂肪によって身体に何が起きているのでしょうか?」ということなのです。■「食べなければ痩せる」は正しい。でも……体重を減らす基本は食事と運動です。摂取するエネルギーより消費するエネルギーが多ければ、理論上は体重が減っていきます。ところが人間の身体はそれほど単純ではありません。食事量を減らして体重が落ちてくると、身体はエネルギー消費を節約しようとします。また、食欲や満腹感にはGLP-1をはじめとした消化管ホルモンや脳の食欲調節機構など、多くの生理機能が関係しています。そのため、「頑張って10kg痩せたのに戻ってしまった」ということは決して珍しくありません。肥満治療は「本人の意志の強さ」だけで解決できる問題ではないのです。■肥満治療にも薬を使う時代になりました近年、この食欲やエネルギー代謝に関係する仕組みに作用する薬が登場しています。代表的なのがGLP-1受容体作動薬であるセマグルチド(ウゴービ)や、GIP/GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチド(ゼップバウンド、マンジャロ)です。セマグルチド2.4mgを検討したSTEP 1試験では、食事・運動などの生活習慣への介入を行ったうえで、68週間後の平均体重変化率はセマグルチド群-14.9%、プラセボ群-2.4%でした。またチルゼパチドを検討したSURMOUNT-1試験では、72週間後の平均体重変化率は用量に応じて約-15~-21%でした。もちろん、これは「誰でも同じだけ痩せる」という意味ではありません。対象患者や投与量などの条件が定められた臨床試験の平均値です。■「痩せ薬」ではなく、代謝を考える薬ここが大切なところです。これらの薬を単純に「注射するだけで痩せる薬」と考えるのは適切ではありません。実際、これらの薬について現在研究されているのは体重だけではありません。血糖、血圧、脂質、心血管疾患、睡眠時無呼吸、脂肪肝など、肥満に関連するさまざまな健康問題について研究が進んでいます。つまり現在の肥満治療は、「体重を減らすこと」から「肥満によって生じている健康障害を改善すること」へ考え方が変わりつつあるのです。■では、誰でも薬を使えばいいのでしょうか?もちろん、そうではありません。薬物療法には吐き気、便秘、下痢などの消化器症状をはじめとする副作用があります。また、病歴や服用中の薬などによって使用に注意が必要な場合があります。さらに薬だけに頼って食生活や運動習慣を変えなければ、長期的な健康管理として十分とはいえません。そして日本では、ウゴービやゼップバウンドは一定の条件を満たした「肥満症」に対して承認されています。一方、マンジャロ(チルゼパチド)は2型糖尿病治療薬であり、肥満・減量を目的とする使用は国内承認の適応とは異なります。したがって、これらは「希望すれば誰でも使う薬」ではなく、メリットとリスクを理解したうえで医師と相談する必要があります。■体重計ではなく「身体全体」を見てみましょうもし、✓ 最近お腹まわりが大きくなってきた✓ 健診で血糖値を指摘された✓ 血圧が上がってきた✓ 脂肪肝と言われた✓ いびきがひどくなった✓ 膝が痛くて運動できないといったことがあれば、「ダイエットしなければ」と考えるだけではなく、「なぜ体重が増え、身体にどのような影響が出ているのか?」を一度医学的に考えてみてもよいかもしれません。当院では体重だけを見るのではなく、血圧・血糖・脂質・生活習慣などを含めて身体の状態を評価し、食事・運動療法を基本として、必要に応じて薬物療法についてもご相談しています。目標は「細くなること」ではありません。これから10年、20年を健康に過ごすために、今の身体を整えること。それが医学として考える「肥満治療」なのです。いつの日も こころ楽しく すこやかに (参考文献)・「Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity」N Engl J Med 2021;384:989-1002 ・「Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity」N Engl J Med 2022;387:205-216・Wegovy Subcutaneous Injection_Novo Nordisk Pharma Ltd._ review report
「健康診断で毎年『体重を減らしましょう』と言われる」
「血圧も血糖値も少しずつ高くなってきた」
そんなお悩みはありませんか?
しかし医学的には、肥満治療の目的は単に体重計の数字を減らすことではありません。
今回は「肥満を治療する本当の意味」について考えてみましょう。
■問題なのは「体重」だけではありません
たとえば、
✓ 血圧が高くなる
✓ 血糖値が高くなる
✓ 中性脂肪が増える
✓ 脂肪肝になる
✓ 睡眠時無呼吸を起こしやすくなる
✓ 膝や腰への負担が増える
などです。
つまり肥満治療で本当に考えたいのは「何kgになりたいですか?」だけではなく
■「食べなければ痩せる」は正しい。でも……
摂取するエネルギーより消費するエネルギーが多ければ、理論上は体重が減っていきます。ところが人間の身体はそれほど単純ではありません。
食事量を減らして体重が落ちてくると、身体はエネルギー消費を節約しようとします。また、食欲や満腹感にはGLP-1をはじめとした消化管ホルモンや脳の食欲調節機構など、多くの生理機能が関係しています。
そのため、「頑張って10kg痩せたのに戻ってしまった」ということは決して珍しくありません。
代表的なのがGLP-1受容体作動薬であるセマグルチド(ウゴービ)や、GIP/GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチド(ゼップバウンド、マンジャロ)です。
セマグルチド2.4mgを検討したSTEP 1試験では、食事・運動などの生活習慣への介入を行ったうえで、68週間後の平均体重変化率はセマグルチド群-14.9%、プラセボ群-2.4%でした。
またチルゼパチドを検討したSURMOUNT-1試験では、72週間後の平均体重変化率は用量に応じて約-15~-21%でした。
もちろん、これは「誰でも同じだけ痩せる」という意味ではありません。対象患者や投与量などの条件が定められた臨床試験の平均値です。
■「痩せ薬」ではなく、代謝を考える薬
ここが大切なところです。
これらの薬を単純に「注射するだけで痩せる薬」と考えるのは適切ではありません。
実際、これらの薬について現在研究されているのは体重だけではありません。血糖、血圧、脂質、心血管疾患、睡眠時無呼吸、脂肪肝など、肥満に関連するさまざまな健康問題について研究が進んでいます。
■では、誰でも薬を使えばいいのでしょうか?
もちろん、そうではありません。
薬物療法には吐き気、便秘、下痢などの消化器症状をはじめとする副作用があります。また、病歴や服用中の薬などによって使用に注意が必要な場合があります。
さらに薬だけに頼って食生活や運動習慣を変えなければ、長期的な健康管理として十分とはいえません。
そして日本では、ウゴービやゼップバウンドは一定の条件を満たした「肥満症」に対して承認されています。一方、マンジャロ(チルゼパチド)は2型糖尿病治療薬であり、肥満・減量を目的とする使用は国内承認の適応とは異なります。したがって、これらは「希望すれば誰でも使う薬」ではなく、メリットとリスクを理解したうえで医師と相談する必要があります。
■体重計ではなく「身体全体」を見てみましょう
✓ 最近お腹まわりが大きくなってきた
✓ 健診で血糖値を指摘された
✓ 血圧が上がってきた
✓ 脂肪肝と言われた
✓ いびきがひどくなった
✓ 膝が痛くて運動できない
といったことがあれば、「ダイエットしなければ」と考えるだけではなく、「なぜ体重が増え、身体にどのような影響が出ているのか?」を一度医学的に考えてみてもよいかもしれません。
当院では体重だけを見るのではなく、血圧・血糖・脂質・生活習慣などを含めて身体の状態を評価し、食事・運動療法を基本として、必要に応じて薬物療法についてもご相談しています。
目標は「細くなること」ではありません。これから10年、20年を健康に過ごすために、今の身体を整えること。
それが医学として考える「肥満治療」なのです。
いつの日も こころ楽しく すこやかに