新前橋すこやか内科・漢方内科クリニック|内科・漢方内科、外科、補完・代替医療(自由診療)

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健康のこと、日常のことなどを発信しています。

残暑お見舞い申し上げます

2024/8/16
気が付いたらお盆が過ぎてしまいました。

今年はお盆に台風がやって来ましたが、低気圧の影響をうける方にとってはいい迷惑だったのではないでしょうか?
東洋医学における「水毒」という体質の方の診察をしているといろいろなお話を聞くことができて大変興味深いです。水毒の方は体内で水の偏り(偏在)を生じている体質の方です。体内の水も気圧の影響を受けて膨らんだり縮んだりするので(PV=一定というやつです)、台風のせいで体調を崩したりされます。
興味深い点は、台風が発生したときに不調になる方と、台風がある程度の位置にあるときに不調になる方と、台風が通り過ぎるときに不調になる方と…人によってそれぞれ不調になるときの台風の位置が異なるのです。もしかするとこの研究をすると何か面白い発見があるかもしれませんね。

水毒体質のかたの治療には五苓散(ごれいさん)という漢方薬を使用するのが常套手段です。五苓散の優れているところは、余分な水は尿として体外に捨てる一方で、不足しているところには水を分配して水の偏在を是正し、しかも内服し続けていても脱水症を起こすことはないという点です。ああなんて素晴らしい漢方薬なんでしょう。ノーリスクハイリターンではありませんか。

で…多くの場合において五苓散で問題が解決するのですが、時には五苓散だけでは効果が不十分ということがあります。

例えば「五苓散は二日酔い予防に効果的である」とご存知の方が多いのですが、実際に飲酒前後に内服してもあまり効果を得られないという方もいらっしゃいます。そういった方には茵蔯五苓散(いんちんごれいさん)という漢方薬をご紹介しています。

茵蔯五苓散は、五苓散に茵蔯蒿(いんちんこう)という生薬が追加されているものですが、茵蔯蒿が肝機能を高めることでアルコールの分解(解毒?)を早めてくれる場合があります。体質的に合う方であれば、五苓散よりも茵蔯五苓散の方が二日酔い対策に効果的です。

また、今年のように異常に暑い夏には冷たい飲み物をがぶ飲みしてしまい、胃腸が冷えて消化不良で下痢になってしまう方も多いのではないかと思います。そういった方に対して六君子湯や人参湯、大建中湯などのスター級漢方薬を使用しても症状が改善されない場合があるのですが、胃苓湯(いれいとう)という漢方薬を使用すると症状がみるみる改善される場合があります。

胃苓湯は平胃散(へいいさん)という漢方薬と五苓散を合体させた漢方薬ですが、胃腸機能の低下による消化不良と水毒から生じる下痢には効果的です。保険診療上の適応病名が微妙に限定的なのでやや使いづらい印象がありますが、副作用が出にくく優秀な漢方薬です。

まだまだ暑さは続きます。日本の夏は暑さと湿気が合体した「湿熱」という環境病態を起こします。保険診療で使用する漢方薬は、湿熱の治療に適したものがそれほど多くないため、治療がうまくいかないことが多々あります。病気にならないよう、体調管理に気を付けることが重要だなと、夏が来るたびに毎年思っているような気がします。


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なにをやっても治らなかった湿疹

2024/7/18
漢方薬は時として予期しない効果を発揮することがあります。

東洋医学では体の組織すべてが連動していると考えていますし、肉体と精神も別々のものではなく一体のものであると考えています。
そのため、心身のある問題を解決することで想定外の部分までも治ってしまうことがあるのです。

更年期障害によるホットフラッシュやイライラをご相談いただいたある女性の方がいらっしゃいました。漢方医学的には瘀血という血の巡りが悪い状態(微小血液循環不良)であり、足の冷えや顔の火照り、のぼせなどの症状を認めました。

イライラしやすい状態は交感神経が興奮している状態であり、自律神経失調状態の一種ですが、東洋医学的には肝気鬱結と考えることが多い状況です。

こういった更年期の典型的な症状に対して、加味逍遙散(かみしょうようさん)という漢方薬が頻用されます。加味逍遙散は、ストレス緩和の柴胡や、血流を改善する当帰、牡丹皮などの生薬に加えて、抗炎症あるいは熱を冷ます作用のある山梔子という生薬を含んでいます。

今回ご相談いただいた患者さんも、加味逍遙散を内服してホットフラッシュ症状がだいぶ治まりましたが、ホットフラッシュが改善したことよりも頭皮の湿疹が治ったことに感謝されました。

診察のときには伺っていなかったのですが、もう何年間も頭皮にできた湿疹でお悩みだったそうです。あちこちの皮膚科に通院してあれこれ治療しても治らずに諦めていたのだとか…。そんな湿疹が、漢方薬を内服してひと月ほどですっかり治ってしまったので、驚きとともに感謝してくださいました。

今回の頭部の慢性湿疹ですが、瘀血という病態のため下半身は冷えて上半身には熱がこもることで生じていたと考えられます。

加味逍遙散に含まれる当帰や牡丹皮によって微小血液循環が改善したことで身体全体としての血液循環の改善とともに熱の循環も改善しました。そして山梔子には抗炎症作用がありますので、こちらも湿疹に効いたというわけです。

東洋医学では、皮疹はなんらかの毒素や有害物質を皮膚を通して体外に排出するための反応であると考えます。

今回の患者さんの場合には、頭部に溜まっていた熱と血液中の有害物質を加味逍遙散で頭部以外の場所(おそらく便)から排出できるようになったため湿疹が軽快したと考えられます。

漢方医学を学んでいると、常にマクロな視点を持ち続けることの重要性を痛感します。


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開院4周年の御礼

2024/7/3
おかげさまをもちまして、本日2024年7月3日にて当院は開院4周年を迎えました。
これもひとえに当院をご贔屓いただいている近隣の皆様、遠方からわざわざお越しくださる皆様のおかげでございます。
毎度毎度同じようなことを書いているかもしれませんが、私の力不足故にご迷惑やご不便をおかけすることも多々あるかと思いますが何卒ご容赦頂ければ幸いでございます。特に駐車場不足については私共も開院以来ずーーーーっと頭を悩ませているものの、決定的な解決策がない状況でございます。
あれもやらなければ、これもやらなければ、と思いつつ日々の診療に追われてしまい手を付けるべきところに手が回っていない毎日を過ごしております。今後、日本は人口がどんどん減ってゆきますし、医療や福祉介護の制度もどんどん変わっていくことになると思われます。
漢方医学はさまざまな国や地域の時代の荒波を潜り抜け、有名無名を問わず多くの漢方医の知恵と創意工夫と熱意が受け継がれてきた人類の宝です。「元気になりたい」「長生きしたい」という患者様の切実な思いと、「元気にしたい」「一人でも多く救いたい」という漢方医のドラマが「傷寒論」や「金匱要略」といった古典の凝縮されています。日本漢方にも負けず劣らずの古典や名著がたくさんあります。
漢方を学び、漢方を用いることは、アジアの広い地域における数えきれないほど多くの人々の喜怒哀楽や幸不幸から恩恵を受け取っていることであり、ご先祖様やご先祖ではない方々のおかげ様の医療であるとしみじみ感じます。そして当院を訪れてくださった皆様の診療ひとつひとつが、私たちの子孫や遠い未来の人類にとっての福音となるよう、明日からの診療も心を込めて大切におこなっていきたいと改めて認識した4周年となりました。
今後ともご指導ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

新前橋すこやか内科・漢方内科クリニック 院長 本城裕章

「飲み込むことがコワい」

2024/6/26
食べ物や飲み物を飲み込む「嚥下」は、半分は意識的に、半分は無意識的に制御されている筋肉運動です。

みなさんも一度はうっかり喉に何かを詰まらせた経験があるかもしれませんが、食べ物が気道に入ってしまうと窒息してしまい命の危機です。
(食べ物が通る食道と、空気が通る気道の入り口は喉のあたりですぐ隣り合っています)

「飲み込む」という行為は意識的、無意識的に限らず1日の中で何度も何度もおこなわれている行為であるため、一度窒息という経験をしてしまうとトラウマになってしまいがちです。

飲み込むことがトラウマになってしまうと、飲み物を飲んだり、食事をすることに強い恐怖心が生まれてしまいます。そうなると毎日生きるために食事をしなければならないことに対して恐怖や葛藤が生まれてしまいます。

というわけでそのような「飲み込むことへの恐怖心」をご相談いただくことがあります。

一般的には精神療法を行ったりするのかもしれませんが、独りで悩みと苦痛を抱えながらなんとか毎日生きているという人もけっこういらっしゃるようです。

トラウマやPTSDには「神田橋処方」と言われる漢方薬の処方パターンが有名なのですが、飲み込みに対する恐怖の場合には半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)という漢方薬をまず最初に使用しています。

半夏厚朴湯は、不安による嚥下困難、のどにいつも何か詰まっているような感覚(ヒステリー球)に対する処方として有名です。つまり半夏厚朴湯は精神的緊張によるのど周囲の筋肉のこわばりを緩めてくれるように作用するのです。

飲み込みに対する恐怖に対して半夏厚朴湯を使用すると、抗不安作用による精神的緊張の緩和と、嚥下に関する筋肉の余計な緊張を緩めてくれるので徐々に飲み込みがスムーズになっていきます。

そうすると飲み込むことに対して徐々に慣れと安心感が生じてきます。なんとか元の生活に戻れるようになっていきます。

もちろん半夏厚朴湯が効かない場合もありますし、半夏厚朴湯だけでは完全には症状が改善しない場合もあります。

その場合には「理気作用」を持つほかの漢方薬と半夏厚朴湯を併用することでなんとか精神的・肉体的緊張を軽減できるようあの手この手を尽くしていくことになります。


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意外な漢方薬で便秘が治る

2024/5/25
漢方薬には多種多様な薬効成分が含まれているので
西洋医学的な薬のように単一の効果だけではなく、さまざまな効能・効果を発揮します。

近年では古典的な使用方法以外のさまざまな臨床場面で応用され始めており、漢方薬の新たな可能性が日々発掘されています。
特に、精神的不調から来る自律神経のバランス失調、そしてその結果の身体的症状を改善させてくれる効果は、まさしく漢方医学の理念の一つである「心身一如(しんしんいちにょ)」そのものであると言えます。

今回はある高齢女性のケースをご紹介してみたいと思います。
当院を受診されたある女性は、ご家族の介護を数年間した後にお看取りされ、その後から介護中のことを後悔したり、もっとこうすればよかったとクヨクヨ考えるようになったり、何事にも意欲がなくなり眠れなくなってしまいました。

いわゆる燃え尽き症候群とかグリーフの比較的重くない状況であろうと考えられる状態です。
漢方医学的には気虚・気鬱の病態を考えました。
そこで、落ち込んだ気分をスッキリさせて軽やかにしてくれるような効果を発揮する「香蘇散(こうそさん)」という漢方薬を使用しました。

この漢方薬がよく効き徐々に気分が晴れやかになっていったのですが、
こちらが想定していなかった効果について患者さんからお話していただきました。

香蘇散を飲み始めたところ、今までなんとなく出が悪かったお通じがスッキリ出るようになり、気分が良くなって体調もどんどん良くなって行ったとのことでした。

香蘇散を使用して便通が改善したというお話は初めて聞きましたが、なぜ効いたのか漢方医学的に考えてみますと、気のめぐりがお腹で停滞すると腸の動きが悪くなって腸内ガスが溜まったり、腹部膨満感が生じたりします。
香蘇散は気を動かす力(理気作用)がそれほど強い漢方薬ではありませんが、軽い抑うつ気分の時などには良く効いてくれる印象があります。保険適用上は風邪で気分がスッキリしない時に使用されるので、一般向けの解説書には「単なる風邪薬」と書いてあるかもしれませんが、やはり漢方薬なのでさまざまな作用・効果を持っています。

私自身、気を付けないといけないと日々中医しているのですが、「この漢方薬はこういう漢方薬」という固定観念を持ってしまっていると漢方薬の可能性を自ら閉じてしまうことになります。

漢方薬の真の効果や作用が解明されるにはまだまだ時間が必要だろうと思います。


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