「最近、いびきがひどくなったと言われる」「しっかり寝たはずなのに、朝から眠い」「昼食後、仕事中にどうしても眠くなってしまう」そんなことはありませんか?単なる疲れや睡眠不足と思っているその症状。もしかすると「睡眠時無呼吸」が隠れているかもしれません。そして睡眠時無呼吸を考えるうえで、実はとても重要なのが「肥満」です。今回は、体重と睡眠の意外に深い関係について考えてみましょう。■眠っている間に「呼吸が止まる」?睡眠時無呼吸症候群(SAS)の代表が「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)」です。眠っている間に舌や喉の周囲の組織などによって気道が狭くなり、「いびき」 ↓「呼吸が浅くなる」 ↓「呼吸が止まる」 ↓「酸素が低下する」 ↓「脳が反応して呼吸を再開する」ということを、一晩に何度も繰り返します。本人は眠っているので、意外と気づきません。そのため、✓ 大きないびき✓ 朝の頭痛✓ 起床時のだるさ✓ 日中の強い眠気✓ 集中力の低下などが診断のきっかけになることがあります。■睡眠時無呼吸は「眠いだけ」の病気ではありません睡眠中に何度も低酸素状態になり、そのたびに身体が覚醒反応を起こすと、自律神経、とくに交感神経が刺激されます。その結果、睡眠時無呼吸は高血圧をはじめとした心血管系の問題とも深く関係します。つまり、「いびきがうるさい」だけの問題ではないということです。閉塞性睡眠時無呼吸の重要なリスク因子の一つが肥満です。体重が増えると、お腹だけに脂肪がつくわけではありません。首や舌、上気道周囲にも脂肪が蓄積し、気道が狭くなりやすくなります。さらに腹部の肥満によって呼吸運動にも負担がかかります。すると、肥満 → 睡眠時無呼吸 → 睡眠の質低下 → 日中の疲労 → 活動量低下、という悪循環が成立することがあります。ですから、肥満を伴う睡眠時無呼吸では、CPAPなどによって気道を確保する治療だけでなく、体重管理も重要になります。■「体重を減らす」ことで睡眠時無呼吸も変わる?この分野で非常に興味深い研究が2024年に報告されました。「SURMOUNT-OSA」という臨床試験です。肥満を伴う中等症~重症の閉塞性睡眠時無呼吸患者を対象に、GIP/GLP-1受容体作動薬である「チルゼパチド」を52週間使用した研究です。睡眠時無呼吸の重症度を見る代表的な指標に、AHI(無呼吸低呼吸指数)があります。これは「1時間の睡眠中に無呼吸や低呼吸が何回起こるか」を表します。研究開始時には平均して1時間あたり約50回という重症の患者さんたちでした。52週間後、AHIはチルゼパチド群で平均約25~29回/時減少しました。一方、プラセボ群では約5回/時の減少でした。さらに体重だけでなく、✓ 睡眠中の低酸素負荷✓ 収縮期血圧✓ 炎症を示す指標✓ 患者さん自身が感じる睡眠関連症状などにも改善が認められました。■マンジャロで睡眠時無呼吸を治せるの?ここは誤解を招きがちな部分ですが、SURMOUNT-OSA試験の結果だけから、「いびきがあるからマンジャロを使えばよい」という話にはなりません。SURMOUNT-OSAの対象は、平均BMIが約39で、中等症~重症の閉塞性睡眠時無呼吸を持つ肥満患者でした。肥満による気道閉塞が原因であれば、チルゼパチドによる減量によって睡眠時無呼吸が軽減される可能性はあります。実際、「マンジャロ」と同じ有効成分チルゼパチドを使用した肥満症治療薬「ゼップバウンド」は、日本では一定の条件を満たした睡眠時無呼吸症候群の患者に治療適応があります。しかし、睡眠時無呼吸そのものについても、重症度などに応じてCPAPをはじめとする適切な治療が必要です。肥満が原因ではなく生じている睡眠時無呼吸症候群もあります。薬を使うことだけが答えではありません。■「いびき」を身体からのサインとして考えてみる大切なのは、「最近いびきがひどくなった」という変化を、単なる睡眠の問題として片づけないことです。たとえば、✓ 以前より10kg以上太った✓ 首まわりが太くなった✓ 血圧も高くなった✓ HbA1cも上昇してきた✓ 脂肪肝を指摘された✓ 日中眠くて仕方がないという変化が一緒に起きているのであれば、「いびき」「血圧」「血糖」「体重」は、それぞれ別の問題ではないかもしれません。背景にある肥満や代謝異常という一つの問題が、身体のさまざまな場所に現れている可能性があります。■「痩せる」ではなく「よく眠れる身体」へ肥満治療というと、「見た目を良くするため」というイメージがまだ強いと思います。しかし、ぐっすり眠れる。朝すっきり起きられる。昼間元気に活動できる。これも立派な肥満治療の目標です。当院では、単に「何kg痩せたいか」だけではなく、血圧、血糖、脂質、生活習慣などを含め、肥満によって身体にどのような影響が出ているのかを考えながら治療をご相談しています。ご家族から、「最近いびきがひどくなったよ」と言われたら。それは身体から届いた小さなサインかもしれません。体重計の数字だけではなく、身体全体を一度見直してみてはいかがでしょうか。いつの日も こころ楽しく すこやかに
「しっかり寝たはずなのに、朝から眠い」
「昼食後、仕事中にどうしても眠くなってしまう」
そんなことはありませんか?
もしかすると「睡眠時無呼吸」が隠れているかもしれません。そして睡眠時無呼吸を考えるうえで、実はとても重要なのが「肥満」です。今回は、体重と睡眠の意外に深い関係について考えてみましょう。
眠っている間に舌や喉の周囲の組織などによって気道が狭くなり、
「いびき」
↓
「呼吸が浅くなる」
↓
「呼吸が止まる」
↓
「酸素が低下する」
↓
「脳が反応して呼吸を再開する」
ということを、一晩に何度も繰り返します。
本人は眠っているので、意外と気づきません。
そのため、
✓ 大きないびき
✓ 朝の頭痛
✓ 起床時のだるさ
✓ 日中の強い眠気
✓ 集中力の低下
などが診断のきっかけになることがあります。
■睡眠時無呼吸は「眠いだけ」の病気ではありません
その結果、睡眠時無呼吸は高血圧をはじめとした心血管系の問題とも深く関係します。
つまり、「いびきがうるさい」だけの問題ではないということです。
閉塞性睡眠時無呼吸の重要なリスク因子の一つが肥満です。
体重が増えると、お腹だけに脂肪がつくわけではありません。首や舌、上気道周囲にも脂肪が蓄積し、気道が狭くなりやすくなります。さらに腹部の肥満によって呼吸運動にも負担がかかります。すると、肥満 → 睡眠時無呼吸 → 睡眠の質低下 → 日中の疲労 → 活動量低下、という悪循環が成立することがあります。
ですから、肥満を伴う睡眠時無呼吸では、CPAPなどによって気道を確保する治療だけでなく、体重管理も重要になります。
■「体重を減らす」ことで睡眠時無呼吸も変わる?
肥満を伴う中等症~重症の閉塞性睡眠時無呼吸患者を対象に、GIP/GLP-1受容体作動薬である「チルゼパチド」を52週間使用した研究です。
睡眠時無呼吸の重症度を見る代表的な指標に、AHI(無呼吸低呼吸指数)があります。
これは「1時間の睡眠中に無呼吸や低呼吸が何回起こるか」を表します。
研究開始時には平均して1時間あたり約50回という重症の患者さんたちでした。
52週間後、AHIはチルゼパチド群で平均約25~29回/時減少しました。
一方、プラセボ群では約5回/時の減少でした。
さらに体重だけでなく、
✓ 睡眠中の低酸素負荷
✓ 収縮期血圧
✓ 炎症を示す指標
✓ 患者さん自身が感じる睡眠関連症状
などにも改善が認められました。
■マンジャロで睡眠時無呼吸を治せるの?
SURMOUNT-OSAの対象は、平均BMIが約39で、中等症~重症の閉塞性睡眠時無呼吸を持つ肥満患者でした。肥満による気道閉塞が原因であれば、チルゼパチドによる減量によって睡眠時無呼吸が軽減される可能性はあります。
実際、「マンジャロ」と同じ有効成分チルゼパチドを使用した肥満症治療薬「ゼップバウンド」は、日本では一定の条件を満たした睡眠時無呼吸症候群の患者に治療適応があります。
■「いびき」を身体からのサインとして考えてみる
たとえば、
✓ 以前より10kg以上太った
✓ 首まわりが太くなった
✓ 血圧も高くなった
✓ HbA1cも上昇してきた
✓ 脂肪肝を指摘された
✓ 日中眠くて仕方がない
という変化が一緒に起きているのであれば、「いびき」「血圧」「血糖」「体重」は、それぞれ別の問題ではないかもしれません。
背景にある肥満や代謝異常という一つの問題が、身体のさまざまな場所に現れている可能性があります。
■「痩せる」ではなく「よく眠れる身体」へ
肥満治療というと、「見た目を良くするため」というイメージがまだ強いと思います。
しかし、
ぐっすり眠れる。
朝すっきり起きられる。
昼間元気に活動できる。
これも立派な肥満治療の目標です。
当院では、単に「何kg痩せたいか」だけではなく、血圧、血糖、脂質、生活習慣などを含め、肥満によって身体にどのような影響が出ているのかを考えながら治療をご相談しています。
ご家族から、「最近いびきがひどくなったよ」と言われたら。
体重計の数字だけではなく、身体全体を一度見直してみてはいかがでしょうか。
いつの日も こころ楽しく すこやかに