「最近、なんだか疲れやすい」「仕事から帰ると、何もする気にならない」「以前なら平気だった買い物でも疲れる」「休んでも疲れが取れなくなった」40代、50代を過ぎると、こんな変化を感じる方が増えてきます。でも、「もう若くないからね」「歳を取ればこんなものだろう」と、そのままにしていませんか?もちろん年齢とともに体力は変化します。しかし、「疲れやすくなった」という変化そのものが、身体からのサインであることもあります。今回は、総合内科と漢方医学、両方の視点から「疲労」について考えてみましょう。■「疲れ」は病名ではありません疲労という症状が難しいのは、その原因が非常に多いことです。たとえば、✓ 睡眠不足✓ 過労✓ 運動不足✓ ストレスだけでも疲れます。しかし、その一方で、✓ 心臓の病気✓ 肺の病気✓ 貧血✓ 甲状腺の病気✓ 糖尿病✓ 腎臓病✓ 睡眠時無呼吸症候群などでも、「なんとなく疲れる」という症状が現れることがあります。だから「疲れている=疲労回復の薬を使えばよい」というほど単純ではありません。まず大切なのは「なぜ疲れているのか?」を考えることです。■心不全でも「疲れやすい」ことがあります心不全というと「ものすごく息が苦しくなる病気」と思われるかもしれません。しかし慢性心不全では「最近、以前ほど歩けなくなった」「階段がつらくなった」「夕方になるとぐったりする」といった、はっきりしない症状から始まることがあります。心臓から身体へ送り出す血液が十分でなくなったり、身体に水分がたまりやすくなったりすると、息切れ・疲労感・むくみなどが現れます。特に、「疲れやすい+息切れ」「疲れやすい+足のむくみ」「疲れやすい+動悸」という組み合わせは、「歳のせい」だけで済ませず、一度原因を確認しておきたい症状です。■COPDでも最初は「体力が落ちた」と感じることがありますもう一つ、見逃されやすいのがCOPD(慢性閉塞性肺疾患)です。特に喫煙歴のある方では注意が必要です。COPDが進むと、運動したときに息切れが起こります。すると無意識のうちに、階段を使わない↓長い距離を歩かない↓外出が減る↓筋肉が落ちる↓さらに疲れやすくなるという悪循環が起こることがあります。本人は「歳を取って体力がなくなった」と思っていても、その背景に呼吸機能の低下が隠れている場合があるのです。■「疲れ+眠い」なら睡眠もチェック昼間に眠い。朝起きても疲れている。会議中に眠くなる。家族から「いびきがすごい」「寝ているときに呼吸が止まっている」と言われる。こんな場合には、睡眠時無呼吸症候群も考えます。睡眠時間を確保しているのに疲れが取れない場合、「何時間眠ったか」だけではなく、「きちんと眠れているか」という視点も必要です。■「疲れ+動悸」なら貧血や甲状腺もたとえば貧血になると、身体へ酸素を運ぶ能力が低下します。すると、疲れやすい息切れする動悸がする立ちくらみがするなどの症状が現れることがあります。また甲状腺ホルモンの異常でも、疲労感・動悸・体重変化・暑がり・寒がりなどが起こります。つまり「疲労」は、全身のさまざまな病気に共通する症状なのです。■漢方では「気が足りない」という考え方がありますでは漢方医学では、疲労をどう考えるのでしょうか。漢方には「気虚(ききょ)」という考え方があります。簡単に表現すれば、身体を活動させる力が不足した状態です。気虚の人では、✓ 疲れやすい✓ 身体がだるい✓ 声に力がない✓ 食欲がない✓ 食後に眠くなる✓ 風邪をひきやすい✓ 少し動くと息切れするといった症状が組み合わされることがあります。ここで面白いのは、「疲れ」という一つの症状だけを見るのではなく、食欲・胃腸・呼吸・睡眠・冷えなどをまとめて評価するところです。■「疲れたら補中益気湯」ではありません気虚に対してよく知られている処方の一つが、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)です。「補中益気」という名前には、身体の中心を補い、「気」を益するという意味があります。食欲が落ち、体力が低下し、疲労感が強い人などで検討される処方です。しかし、「疲労=補中益気湯」ではありません。たとえば心不全による疲労なら、まず心臓の状態を評価する必要があります。COPDなら呼吸機能を確認します。貧血なら、その原因を調べなければなりません。甲状腺疾患なら、適切な検査と治療が必要です。原因となる病気を見つけずに、「とりあえず元気が出る漢方を」という治療をするのは、漢方内科としても適切ではありません。■病気を治療しても「元気が戻らない」人もいます一方で、ここからが漢方医学の出番になることがあります。心臓や肺の病気に対して必要な治療を受けている。検査値もある程度安定している。それでも、「以前のように元気が出ない」「食欲がなくなった」「体重や筋肉が落ちてきた」「すぐ横になりたくなる」という方がいます。特に慢性疾患では、「病気そのもの+食欲低下+活動量低下+筋肉量低下」が重なり、身体全体が弱っていくことがあります。現代医学では「フレイル」や「サルコペニア」という視点も重要になります。漢方医学の「気虚」という考え方と重なる部分もあり、こうした患者さんでは西洋医学とは少し違った角度から身体を評価することが役立つ場合があります。去年の自分」と比べてみてください。年齢そのものを止めることはできません。しかし「去年より明らかに疲れる」「去年より歩けない」「去年より外出しなくなった」という変化は、単なる年齢だけでは説明できないことがあります。特に、✓ 疲労+息切れ✓ 疲労+むくみ✓ 疲労+動悸✓ 疲労+長引く咳・痰✓ 疲労+いびき・日中の眠気✓ 疲労+食欲低下・体重減少がある場合には、一度身体を調べてみる価値があります。■「歳だから仕方ない」の前に、原因を探してみる当院では疲労感について「元気が出る薬を処方する」だけではなく、心臓なのか。肺なのか。貧血なのか。睡眠なのか。あるいは筋肉や栄養の問題なのか。必要に応じて血液検査、心電図、呼吸機能検査などを組み合わせながら原因を考えていきます。そして必要な標準治療を行ったうえで、体質や症状によって漢方治療を組み合わせることもあります。「最近、なんとなく疲れる」その「なんとなく」の中に、大切な情報が隠れているかもしれません。歳のせいにする前に、一度身体からのメッセージとして考えてみませんか?いつの日も こころ楽しく すこやかに
「仕事から帰ると、何もする気にならない」
「以前なら平気だった買い物でも疲れる」
「休んでも疲れが取れなくなった」
40代、50代を過ぎると、こんな変化を感じる方が増えてきます。
「もう若くないからね」
「歳を取ればこんなものだろう」
と、そのままにしていませんか?
もちろん年齢とともに体力は変化します。
しかし、「疲れやすくなった」という変化そのものが、身体からのサインであることもあります。
今回は、総合内科と漢方医学、両方の視点から「疲労」について考えてみましょう。
■「疲れ」は病名ではありません
たとえば、
✓ 睡眠不足
✓ 過労
✓ 運動不足
✓ ストレス
だけでも疲れます。
しかし、その一方で、
✓ 心臓の病気
✓ 肺の病気
✓ 貧血
✓ 甲状腺の病気
✓ 糖尿病
✓ 腎臓病
✓ 睡眠時無呼吸症候群
などでも、「なんとなく疲れる」という症状が現れることがあります。
だから「疲れている=疲労回復の薬を使えばよい」というほど単純ではありません。
まず大切なのは「なぜ疲れているのか?」を考えることです。
■心不全でも「疲れやすい」ことがあります
しかし慢性心不全では「最近、以前ほど歩けなくなった」「階段がつらくなった」「夕方になるとぐったりする」といった、はっきりしない症状から始まることがあります。
心臓から身体へ送り出す血液が十分でなくなったり、身体に水分がたまりやすくなったりすると、息切れ・疲労感・むくみなどが現れます。
特に、「疲れやすい+息切れ」「疲れやすい+足のむくみ」「疲れやすい+動悸」という組み合わせは、「歳のせい」だけで済ませず、一度原因を確認しておきたい症状です。
特に喫煙歴のある方では注意が必要です。
COPDが進むと、運動したときに息切れが起こります。
すると無意識のうちに、
階段を使わない
↓
長い距離を歩かない
↓
外出が減る
↓
筋肉が落ちる
↓
さらに疲れやすくなる
という悪循環が起こることがあります。
本人は「歳を取って体力がなくなった」と思っていても、その背景に呼吸機能の低下が隠れている場合があるのです。
■「疲れ+眠い」なら睡眠もチェック
朝起きても疲れている。
会議中に眠くなる。
家族から「いびきがすごい」「寝ているときに呼吸が止まっている」と言われる。
睡眠時間を確保しているのに疲れが取れない場合、「何時間眠ったか」だけではなく、「きちんと眠れているか」という視点も必要です。
■「疲れ+動悸」なら貧血や甲状腺も
すると、
疲れやすい
息切れする
動悸がする
立ちくらみがする
などの症状が現れることがあります。
漢方には「気虚(ききょ)」という考え方があります。
簡単に表現すれば、身体を活動させる力が不足した状態です。
✓ 疲れやすい
✓ 身体がだるい
✓ 声に力がない
✓ 食欲がない
✓ 食後に眠くなる
✓ 風邪をひきやすい
✓ 少し動くと息切れする
といった症状が組み合わされることがあります。
■「疲れたら補中益気湯」ではありません
「補中益気」という名前には、身体の中心を補い、「気」を益するという意味があります。
食欲が落ち、体力が低下し、疲労感が強い人などで検討される処方です。
たとえば心不全による疲労なら、まず心臓の状態を評価する必要があります。
COPDなら呼吸機能を確認します。
貧血なら、その原因を調べなければなりません。
甲状腺疾患なら、適切な検査と治療が必要です。
原因となる病気を見つけずに、
「とりあえず元気が出る漢方を」という治療をするのは、漢方内科としても適切ではありません。
■病気を治療しても「元気が戻らない」人もいます
心臓や肺の病気に対して必要な治療を受けている。
検査値もある程度安定している。
それでも、「以前のように元気が出ない」「食欲がなくなった」「体重や筋肉が落ちてきた」「すぐ横になりたくなる」という方がいます。
特に慢性疾患では、「病気そのもの+食欲低下+活動量低下+筋肉量低下」が重なり、身体全体が弱っていくことがあります。
現代医学では「フレイル」や「サルコペニア」という視点も重要になります。
漢方医学の「気虚」という考え方と重なる部分もあり、こうした患者さんでは西洋医学とは少し違った角度から身体を評価することが役立つ場合があります。
去年の自分」と比べてみてください。年齢そのものを止めることはできません。
しかし「去年より明らかに疲れる」「去年より歩けない」「去年より外出しなくなった」という変化は、単なる年齢だけでは説明できないことがあります。
特に、
✓ 疲労+息切れ
✓ 疲労+むくみ
✓ 疲労+動悸
✓ 疲労+長引く咳・痰
✓ 疲労+いびき・日中の眠気
✓ 疲労+食欲低下・体重減少
がある場合には、一度身体を調べてみる価値があります。
■「歳だから仕方ない」の前に、原因を探してみる
心臓なのか。
肺なのか。
貧血なのか。
睡眠なのか。
あるいは筋肉や栄養の問題なのか。
必要に応じて血液検査、心電図、呼吸機能検査などを組み合わせながら原因を考えていきます。
そして必要な標準治療を行ったうえで、体質や症状によって漢方治療を組み合わせることもあります。
「最近、なんとなく疲れる」
その「なんとなく」の中に、大切な情報が隠れているかもしれません。
歳のせいにする前に、一度身体からのメッセージとして考えてみませんか?
いつの日も こころ楽しく すこやかに